移動せずに済む街のほうが便利

保井 リニア新幹線の整備と合わせて国は、名古屋などと一緒になった「スーパーメガリージョン(広域経済圏)構想」を打ち出しています。ただ、こうした大きなメガリージョンは、小さなエリアの魅力づくりと同時に考えなければ、いま以上に競争力のある都市は実現しないと思いますね。

木下 まさに。メガリージョンというのは企業間合併で規模を大きくしていこうという話ですが、単に合併するだけじゃ別に何も変わりません。規模だけでいえば東京圏は世界的にも既に大きすぎるほど大きい。これからは大きいだけでなく、ここまで述べてきたような生産性を見直す視点と、文化生活に目を向けたライフスタイルの変更を実現するためのインフラのあり方を考えないといけません。

 単に同じような大都市を高速交通で結ぶだけでは効果は限定的です。異なる機能を果たす都市をつくり、その上でつなげないと競争力は出ないと思います。

保井 そう、私もメガリージョンから考えるのは、「逆じゃないですか?」と言いたいです。

木下 都市分野も専門性が断絶していて、どうしても都市交通の人は都市交通の話だけになってしまうし、開発の人は開発の話だけになってしまいます。しかしながら、交通で結んで高速で移動させる前に、移動せずに済む街のほうが便利じゃないですか。

 一方で、海外と行き来する人に向けて空港と都心部のアクセスなどについての効率化を図る。内需と外需は区分して考えないといけないんですよね。そして巨大な内需は縮小して高齢化するわけなので、そこまで重要性はなく、むしろ移動を少なくする方向にして、インフラは外需最適化を目指すべきだと思います。

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保井、木下両氏。エリア・イノベーション・アライアンスのオフィスがある品川区大崎にて(写真:西田香織)

「間」にある公共空間の活用がカギ

保井 再開発の際のゾーニングには居住機能と業務機能─要するに住む、働くという性格自体は必ず入るようになっています。だから、ゾーニングの網がかかっていない場所をどう使い得るかをエリアのコンセプトメイキングの起点にしたらどうでしょう。

 一帯にある公共空間などは、まさにそうした役割を担い、エリアに特色を生み出すためカギになるはずです。いままでどおり、一つのデベロッパーが一つの敷地だけを考えているようでは難しい。

木下 はい、「間」にある公共空間をどう活用するかはエリア価値を上げようとする時に、極めて重要な課題ですね。

保井 デベロッパーが自分の敷地だけ、自治体が公共空間だけの面倒をみているのでは結局、敷地単位での採算性にしか関心が向かわず、短期の利回り優先になる。持続的なエリアの価値は二の次です…

木下 再開発でできているエリアは、みんなそうなってしまっていると思います。このオフィスがある大崎もそうですけれど、渋谷も新宿も品川もブロック別に開発事業者がばらばらに進めているので、エリアとしての合同はまだまだ弱いですね。事業者側としても、統率の取りようがないところにコストを掛けるわけにいきませんから、それぞれの敷地内で完結する事業計画にならざるを得ません。

 だから個々の敷地だけ頑張って、周りは根本的には変わっていない。そうした不自然さを是正していかないとエリアの価値は上がらないと思います。

保井 エリアのカラーを出しながら都市の競争力を高めていくという発想に立った時、ロンドンやニューヨークのBID(Business Improvement District、※)のようなエリア単位の経営組織をつくるのか。あるいは、また違うモデルを探るのか。そこは、これから欠かせない議論になるはずです。

※「BID」とは、ある認定された対象エリアについて、民間のエリアマネジメント団体に資金的な裏付けを与えて持続的な街づくり活動を支援する制度

木下 従来の常識を前提から考え直さないと、せっかくのインフラ投資も思ったほどの効果を発揮しない。それが国内的には縮小をしつつ、国際的には競争しなくてはならない東京の課題だと思います。


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