2回目の訪日で「日常」に興味

 山手・下町と2つの顔を持つ上野の集客力は、どれほどのものなのだろうか。同じ台東区内の浅草と比較できる。

 台東区の調査によれば、2014年に上野を訪れた観光客数は2592万人。対する浅草は3050万人と、上野が追いかける立場だ。2012年には肉薄したものの再び離された。

 ただし調査の回答では、台東区の印象で良かったこととして「名所・旧跡、博物館・美術館」を挙げた人が最も多い。日本人で41%、外国人で78%に上る。それらの集中する上野の山手エリアが、大きな訴求力を持っているといえそうだ。

台東区が調査した区内4地区の年間観光客数(単位は万人、2014年)。上野は浅草に次いで人が集まる(資料:台東区の資料をもとに日経BPインフラ総合研究所が作成)
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台東区の印象で良かったこととして挙げられた回答。「名所・旧跡、博物館・美術館」を挙げた割合が日本人、外国人とも最も多く、それらが集中する上野に訴求力があるといえる(資料:台東区の資料をもとに日経BPインフラ総合研究所が作成)
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 上野観光連盟では、外国人にとっての上野の魅力は「日常」とみている。外国人は1回目の訪日で観光地に行き、2回目以降はむしろ日常生活に興味を示すという。日本人の普段の生活を味わえるのがアメ横を中心とするエリアで、ホッピーやもつ焼きを提供する飲食店などが人気を集めている。

 一方、懸念材料もある。JR上野駅の2015年の1日平均乗車人員は18万1588人と一昨年より292人減った。上野東京ラインの開業によって、かつて当駅で地下鉄に乗り換えていた乗客が、上野で降りずそのまま東京駅方面に向かったことが理由とみられている。同ライン開業で同じく中間駅と化した東京駅は、2013年に比べて1万8725人増だ。直通先の新橋や品川も増えた。上野だけが一人負けした格好だ。

 近年は上野駅の東西で高層マンションが増えつつあるなど、街並みにも変化がみられる。既存の繁華街も近代的なビルに建て替わるなど、新陳代謝も進んでいる。2つの顔を持つ街は世界遺産登録で弾みをつけられるか、これからも注目が集まる。

上野東京ライン停車駅の1日平均乗車人員数を2013年と2015年で比較。上野駅だけが減少しており、一人負けの状態だ。かつて上野駅で地下鉄に乗り換えていた乗客が、そのまま東京駅方面に向かうケースが増えているからとみられている ※JR東日本は2016年7月17日現在、2014年のデータを掲載見合わせ中(資料:JR東日本の資料をもとに日経BPインフラ総合研究所が作成)
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アメ横の上野駅側。多くの買い物客でごった返す。近年はアジア系の外国人が増えている(写真:日経BPインフラ総合研究所)
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にぎわう下町のディスカウントショップの多慶屋(たけや)。日本人の日常を求める外国人の姿も目立つようになってきた(写真:日経BPインフラ総合研究所)
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JR上野駅不忍(しのばず)口の前にある商業施設「UENO3153」。上野の街も全面ガラス張りの今風の建築物が増えてきた(写真:日経BPインフラ総合研究所)
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蓮で覆われた不忍池(しのばずのいけ)沿いに建ち並ぶ超高層マンション群。景色の良さで人気が集まる(写真:日経BPインフラ総合研究所)
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中華料理店「東天紅」(写真左)の右隣では東京建物の超高層マンションが建設中。建設地奥の建物は東京大学医学部付属病院(写真:日経BPインフラ総合研究所)
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