“BIM元年”以降の生産性向上をさらに加速

 建築分野でBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)が本格的に導入されはじめたのは、“BIM元年”と呼ばれる2009年のこと。この年以降、建設業の生産性は徐々に回復しつつある。

 また、土木分野でCIM試行プロジェクトが始まった2012年から13年にかけては、さらに生産性は上向いているかのようにも見受けられる。

 BIMやCIMがどの程度、生産性向上に寄与しているのかは分からないが、生産性向上に対する関心と実践が少しずつ建設業界に広がり、その結果として表れていることは推測できる。

下がり続けてきた建設業の労働生産性は、2008年を底として、少しずつではあるが上昇基調に転じている(資料:日本建設業連合会「建設業ハンドブック2015」)
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 土木分野では、生産性が向上した分野と横ばいの分野がある。生産性が向上した分野の代表格は、山岳トンネル工事だ。国交省が11月24日に配布した資料によると、昭和30年代に行われた東海道新幹線のトンネル工事では1m掘り進むのに58人工(にんく)かかっていた。それが2010年に行われた新幹線工事ではわずか6人工に減った。つまり生産性が約10倍に増えたことになる。

50年間で生産性が10倍になった山岳トンネル工事(資料:国土交通省)
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 一方、土工やコンクリート工は過去30年間、ほとんど生産性が伸びていない。1984年と2012年のデータを比較すると、1000m3の盛り土法面整形工を行うのに、作業員数は16人から13人に減っただけだ。また、コンクリートポンプ車でコンクリートを100m3打設するのに要する作業員数は12人から11人と、わずか1人しか減っていない。

生産性が横ばいの土工とコンクリート工(資料:国土交通省)
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 国交省の工事では、1990年代から取り組んできた「CALS/EC」による電子入札や電子納品により、現場にインターネット回線やパソコン、CADソフト、デジタルカメラなどが普及した。

 続いて2008年にまとめられた「情報化施工推進戦略」で、3Dマシンコントロールや3Dマシンガイダンス、TS出来形検査など3次元データを使った施工や維持管理が導入された。

 そして2009年の“BIM元年”、2012年からのCIM試行プロジェクトの実施で、3次元CADによる設計やドローンによる測量など、設計段階まで3D技術やICTの活用範囲が広がってきた。

 今回の「i-Construction」は、これまでのICT活用を集大成するものだ。調査・設計から施工、維持管理まで連続するワークフローとして、構造物のデータがスムーズに流れるようにすることで、建設業の生産性を大幅にアップさせることを狙っている。

 その基本的な狙いは、CALS/ECからほとんど変わっていないが、設計・施工に3D技術が導入されたことで実現性がぐっと増したと言える。

 建設業は今、東日本大震災の復興事業や2020年の東京オリンピックに伴うインフラ整備などで、一時的に活況を呈している。しかし、これらのプロジェクトが一段落した後には再び、国内の建設市場は右肩下がりになるだろう。

 それまでの5年間、「i-Construction」の推進は、国内の建設会社や建設コンサルタント、発注者にBIMやCIM、情報化施工などの活用スキルを上げるための絶好の機会となる。筆者はその後、日本の建設業が3DやICTを武器に、本格的に海外プロジェクトに参入することで、さらなる成長の時代を迎えてほしいと願っている。