BIMモデルからすべての施工図を作成

 このビルの建築確認申請は、BIMモデル提出が義務付けられる前に行われたため、建築設計事務所からは2D図面が提供された。

 大林組はこの図面を基に施工用のBIMモデルを作成した。BIMモデルの詳細度を表すLOD(Level of Development)は、社内のモデリングルールに従い、コンクリート構造部分はLOD300、鋼構造部分はLOD400を基準とした。

LOD300の躯体モデル(資料:大林組)
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LOD300の躯体モデルから作られた施工図(資料:大林組)
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LOD400の鉄骨モデル(資料:大林組)
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LOD400の鉄骨モデルから作られた鋼構造図面(資料:大林組)
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 BIMソフトはオートデスクのRevitを中心とし、干渉チェックにはNavisworksを使っている。また、詳細な鋼構造設計には、テクラのTekla Structuresを使っている。 機器類や電気設備、空調・衛生・ガス設備、消火設備をそれぞれBIMモデル化し、総合モデルを作ってから施工図に切り出した。

 各配管やダクトは種類や流れの方向に応じて細かく色分けされ、全体の干渉チェック時には空調系、上水系、排水系、通気系などの系統別に色分けし、干渉が系統内部なのか他の系統と関係しているのかを分かりやすくした。

 「設計変更があったときには、必ずBIMモデルを直してから、施工図を出図するようにした」と、大林組工務長の近藤哲氏は説明する。

設備の施工図作成手順。2D図面から各設備のBIMモデルを作り、統合して干渉などを解決した後、施工図を作成する(資料:大林組)
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社内モデリングルールに準拠したBIMモデル各部の色分け(資料:大林組)
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低い天井高の中に納まったダクトや配管などの設備(写真:家入龍太)
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 施工図の作成を行う生産設計チームは25人からなる。BIMモデルの作成ができるメンバーは建築と設備を合わせて21人、うち建築担当の10人と設備担当の2人は、干渉回避などの調整など、細かい作業も担当している。

 デザインチームを統括する上級設計マネジャーなども、BIMモデルの中を行き来し、必要な部分を見て確認したり、指示したりしながら業務を行っている。

 こうした大人数でBIMモデルの作成や修正を分業しているため、BIMモデルのファイル名やフォルダー名の命名規則もしっかり決めている。ファイルやフォルダーの名前を見るだけで、そこに建物のどの部分のBIMモデルが収められているのかが、一目で分かるようするためだ。

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BIMソフトで作業を行う生産設計チーム(写真:家入龍太)
生産設計チームの組織図。青色の部分はBIMモデルの閲覧、オレンジ色はBIMモデルの作成と調整、黄色はBIMモデルの作成が行えるスキルを持つ(資料:大林組)
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 「BIMに関する情報を社内で共有するため、大林組東京本社のPDセンターの指導で『BIM NAVI』というイントラネットシステムも導入している。BIMのガイドラインから、モデリングルールやテンプレート、チュートリアルなどが分かりやすく整理されている」(近藤氏)。

 大林組はシンガポールでBIM導入を行った際、初めだけマネジャーや選抜された生産設計担当者に対して外部の専門トレーナーによる2カ月間の集中導入教育を行い、BIM導入の要となるBIMリーダーを養成した。しかし、その後はBIMリーダーが指導しながら業務の中でBIM担当者を育成してきた。新規のメンバーに対しては、大林組のシンガポール事務所で4週間ほどの独自の集中教育も行っている。

 こうした経緯もあり、DUOプロジェクトでは着工以来、BIMは大林組の力だけで活用しており、BIM担当者もすべて社内教育によって能力向上を図っている。

 このほか、大林組東京本社でBIMの活用を統括するPDセンターから講師を招き、生産設計チーム向けと、現場の技術者向けにもトレーニングを実施している。

 その狙いについて、岡野所長は「BIMでモデリングなどを行わないメンバーも教育対象にすることで、BIMの活用効果を最大限にし、東京で行われている先進的な取り組みを全スタッフで情報共有するため」と説明する。

東京本社のPDセンターから講師を招いて行ったBIM研修。昨年10月の生産設計チーム向け研修(左)と今年2月の現場技術者向け研修(右)(写真:大林組)
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