宇土櫓が倒壊しなかった理由

 宇土櫓は熊本城に残る桃山時代末期の建物の一つで、5階建ての部分と一部2階建ての平屋の続櫓(つづきやぐら)からなり、国の重要文化財に指定されている。大小の天守閣に次ぐ「三の天守」とも呼ばれる同城を代表する建物の一つだ。

右後方の続櫓(つづきやぐら)は倒壊したものの、5階建ての部分は威容を保っている宇土櫓。櫓台の石垣にも崩落箇所は見当たらない。ただし、熊本市によるとはらみ出しは生じているという。左奥に天守閣が見える。8月11日に撮影(写真:日経コンストラクション)
[画像のクリックで拡大表示]

 熊本地震では続櫓が全壊したものの、5階建ての部分は持ちこたえ、1960年に完成した鉄骨鉄筋コンクリート造の天守閣で起こったような大量の屋根瓦の落下もなかった。伝統木造でも高い耐震性を確保し得ることを示したかに見えた。

 実際には、宇土櫓は内壁に鉄骨の筋かいで補強した箇所がある。被災前に2回にわたって観光で訪ねた際に見た。熊本市によると1927年、すなわち約90年も前の熊本城が旧日本陸軍の施設だった時代に陸軍が施工したという。したがって現在の耐震基準に対応した補強ではないが、熊本地震で効果を発揮した可能性はあるだろう。