1981年以降に建てられた住宅、いわゆる新耐震住宅のうち、1981年から2000年の間に危険な建物があることが改めて明らかになった。日本木造住宅耐震補強事業者協同組合(木耐協)が8月31日に発表した調査結果によると、同期間に建てられた住宅のうち8割超が大地震(数百年に一度の極めてまれな地震)の際に倒壊する恐れがあるという。

 「倒壊する可能性がある」と診断された住宅の比率(22.90%)と「倒壊する可能性が高い」と診断された住宅の比率(61.59%)を合わせた結果だ。

1981年~2000年5月の間に建てられた住宅の耐震診断結果(資料:日本木造住宅耐震補強事業者協同組合)
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 この調査は、木耐協が毎年データを追加・分析し発表しているものだ。調査の対象は、1950年から2000年5月までに着工された2階建て以下の木造で、在来軸組工法の住宅。同協会が実施した耐震診断の結果を集計した。

 調査のベースとなった住宅は、住まい手が耐震診断を希望していることから、そもそも耐震性に不安があるような建物だったことは否めない。調査結果は多少上振れしていることも考えられる。

 そのことを前提としても、新耐震住宅と称されていながら、倒壊の恐れがある比率がこれほど高いのは驚きだ。

熊本地震で9.1%が倒壊・崩壊

 戸建て住宅の場合、耐震基準と呼び方の関係が少し複雑だ。1981年に建築基準法が改正されたことから、1981年より前を旧耐震、以降を新耐震として分類するのが一般的だ。だが、木造住宅は2000年に耐震基準に関連する告示が示された。このため、現行の基準を満たしているものは、2000年以降に建てられた住宅となる。つまり、1981年~2000年の間に建てられた住宅は、新耐震と呼ばれながらも、中には現行の基準である2000年基準を満たしていない、いわば、既存“耐震”不適格の住宅があるという状態だ。

 なぜ国はこのような危険な状況を積極的に解消しようとしないのだろうか。国が「国土強靱化アクションプラン2016」で掲げる目標を見ると、1981年以前のいわゆる旧耐震住宅の耐震化に軸足を置いているのが現状だ。国はまず危険性が高い旧耐震からの対応を進めたいという思惑があるのかもしれないが、この4月に発生した熊本地震では1981年から2000年の住宅でも耐震性に課題を抱えていることが浮き彫りになった。

 日本建築学会が実施した熊本地震の悉皆調査では、1981年~2000年の住宅800棟のうち9.1%(73棟)が「倒壊・崩壊」という結果が報告されている(関連記事:熊本地震の木造倒壊率は阪神を上回る)。もちろん、耐震性だけが倒壊の原因とは言い切れない。だが、2000年以降に建てられた住宅(現行基準の住宅)のうち倒壊・崩壊したものが2.9%(7棟)にとどまったことと比較すると、1981年~2000年の住宅の耐震性は現行の耐震基準を下回っている可能性が高いと言わざるを得ないだろう。

日本建築学会が熊本県益城町の安永、宮園、木山、辻の城に建つ木造の建築物のうち、倉庫、神社などを除いて集計した(資料:熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会)
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 9月12日には、国土交通省で「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会(第3回)」が開催される予定だ。同会では「熊本地震における建築物被害原因分析報告書(案)」が提示されるという。この1981年~2000年の間に建てられた住宅に対する耐震性能の問題について、報告書ではどこまで言及されるのか。その結果次第で、既存住宅に対する耐震化の進め方が変わってくるかもしれない。

熊本地震が突き付けた戸建ての死角。問題がないはずの新耐震住宅が多数倒壊した。被災住宅の現地調査と図面分析から、倒壊の原因と対策を読み解く。[ 詳細・目次一覧

定価:本体2,400円+税。日経ホームビルダー(編)
A5判、約200ページ
ISBN:978-4-8222-0069-5
商品番号:255320
発行日:2016年8月29日
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