自然の猛威は時に想定を上回る。地震国、日本の建築は、次々に現れた課題を克服すべく、技術面・制度面で進化してきた。だが、災害は弱点を狙い撃ちするかのように突いてくる。熊本地震では、耐震化の重要性という原点が改めて問われている。6月14日に発売になったムック「検証 熊本大地震」から、地震被害の歴史と教訓を読み解く。

日経アーキテクチュアが報じた国内の主な地震を対象に、規模や被害を図化した。6月14日に発売になったムック「検証 熊本大地震」に掲載している(資料:日経アーキテクチュア)
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 熊本地震の発生から1週間後、取材班の第2陣として、熊本県益城町から熊本市にかけての被災地を取材した。地震発生以降、被害状況は様々なメディアで伝えられており、被害のひどさは第1陣で東京から急派した記者から聞いていた。だが、実際に現場を歩いたとき、目の前に広がる光景にショックで呆然となってしまった。

 2月に起こった台湾南部地震では、耐震工学の第一人者である和田章・東京工業大学名誉教授の調査に同行取材。ピロティ形式の鉄筋コンクリート造のビルの倒壊現場を見て回ったばかりだった。熊本地震の被災地で見た鉄筋コンクリート造の建物被害は、台南市で見た被害とあまりに似ていた。和田名誉教授が「自然災害には共通点がある。他国の災害を自分のことのように考えることが重要だ」と語っていたのを思い出した。

 私は日経コンストラクションの新米記者だった2001年に芸予地震を取材して以降、15年ほど、国内外の地震災害の現場取材を経験してきた。それぞれの地震の被害はいまでも鮮明に記憶に残っている。そうした過去の地震で見てきた被害パターンと同様の被害が、熊本地震では各所で繰り返されていた。果たして、過去の地震災害の教訓は生かされているのだろうか――。

熊本地震の被害例。ピロティ形式の鉄筋コンクリート造のマンションで、1階の駐車場が原形をとどめぬほどに潰れていた(写真:日経アーキテクチュア)
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台湾南部地震の被害例。地下1階・地上4階建ての鉄筋コンクリート造の店舗と住宅の複合施設。1階が圧壊し、車が押しつぶされていた(写真:日経アーキテクチュア)
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 日経アーキテクチュアは2013年5月10日号の特集「現代建築解体新書」で、創刊からの編集記事を分析。地震編「死角突く建物被害との戦い」と題し、過去の地震を時系列に並べ、被害の規模を比較した図版をまとめている。冒頭に示した図は、東日本大震災以降に発生した熊本地震などの被害を加筆したものだ。

 1995年の阪神・淡路大震災以降の21年間で、多くの大規模地震が発生している。熊本地震の住宅被害は5月末時点で11万棟を超えた。2011年の東日本大震災、阪神・淡路大震災に次ぐ、住宅の全壊被害を出している。地震動の繰り返しや地震地域係数の問題など様々な論点が指摘されているが、日本全国、地震に無縁なところはないと改めて気付かされる。(関連記事:耐震工学の専門家、和田章氏が読み解く建物被害の教訓