なぜ嫌われても奉仕するのか

 陣治は帰宅すると仕事について愚痴をこぼすことはあるものの、仕事をする姿はほとんど見せない。それでも物語が進めば進むほど、見た目だけでなく生き方も建設関係者らしいと感じられたのはなぜか。終盤のある重大な場面で建設技能者の能力を発揮するのだが、それだけが理由ではなさそうだ。

 十和子は同居する陣治に生計でも家事でも頼っているが、感謝するどころか悪態をついたり水島と不倫関係を持ったりする。それでも陣治は一貫して献身的に彼女の世話を焼く。その姿勢に、一般社会で嫌われようとたたかれようと、大地震や水害などの自然災害が起これば休日返上で出動して対策工事に当たる現実の建設関係者に近いものを感じたのだ。

 この映画のキャッチコピー「共感度0%、不快度100%」の通り、主要な登場人物はみな何らかの点で“最低”の人間だ。そのなかで黒崎と水島がイケメンだが誠実さや信頼性は皆無なのに対して、序盤で見た目による不快感が際立っていた陣治は、実は十和子などにはもったいない男であることが次第に明らかになる。彼の同業者と取材で日常的に接している者として、少し救われた気がした。

建設業の業界団体が拠点を置く東京建設会館(写真:日経コンストラクション)
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