「NATMは合理的な工法」

 「現場付近の地質の条件に対して、NATMは合理的な工法だった」。九州大学の三谷泰浩教授はこう指摘する。三谷教授は岩盤工学の専門家として、建設技術専門委員会にメンバーとして参加していた。

事故前日に撮影したNATM区間。崩落は写真奥で起こった(写真:調 崇史)
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 三谷教授によると、まず深さ約20mの地下にトンネルを設けるに当たり、開削工法は向かないという指摘があったという。掘削しなければならない土砂の量が多くなるうえ、地上は交通量の多い「はかた駅前通り」。交通規制による影響が大きくなるほか、埋設された水道管や下水道管、ガス管などを移設したり、仮支えしたりする手間が掛かる。

 「かつて福岡市の地下鉄空港線で開削工事を実施した際、地上の規制による交通渋滞が問題となった。埋設管の移設なども考えると、現実的な工法とは言えない」(三谷教授)。

 では、シールド工法はどうか。事故現場のすぐ西隣にある駅間トンネルの工区は、シールド工法で掘進する計画となっている。

 事故が起こった工区は、駅のホームと駅間のトンネルを含むので、トンネルの断面を途中で変える必要がある。隣接する工区のシールド機を使ってそのまま掘進したとしても、後から幅の広い駅部分などを地中で切り開く必要があった。

 「結果的にトンネル内部からNATMと同じような方法で拡幅する工事が必要になる。リスクもNATMを採用する場合と変わらない。そうであればコストが安いNATMを選ぶだろう」と三谷教授は話す。

 都市部の地下をNATMで掘削する場合、シールド工法と比べて半分以下のコストで済むという指摘もある。シールド機やセグメントの製作が必要なシールド工法に対し、地山の力を借りてトンネルを支えるNATMは比較的安価に施工しやすい。