日経アーキテクチュアは2017年9月28日号で住宅特集「『不動産』に踏み込め」を掲載。「建築」と「不動産」の領域を越えて、新たなビジネススタイルに取り組む動きを追った。ここでは、同号に掲載した、一級建築士で不動産コンサルタントの田村誠邦氏(アークブレイン代表取締役)のインタビューを再編集・再録する。なお田村氏を講師に迎え、特集の内容と連動する形で、10月25日にセミナーを開催する。

田村誠邦(たむらまさくに) 1977年に東京大学を卒業後、建設会社を経て97年から現職。建築と不動産の垣根を越え、土地の有効活用や共同住宅の建て替えに関するコンサルティングなどを手掛ける。明治大学理工学部特任教授、博士(工学)、不動産鑑定士、一級建築士(写真:日経アーキテクチュア)
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■日経アーキテクチュア 建築実務セミナー
仕事が取れる 設計者のための“不動産”特別講義
~激増する二世帯・空き家対策で勝つ!~
  • 日時:2017年10月25日(水)13:00~17:30 (開場12:30)
  • 内容:一級建築士で不動産コンサルタントの田村誠邦氏(アークブレイン代表取締役)を講師に迎え、住宅設計に関わる建築士や工務店経営者を対象に、顧客をうならせる相続・法律・税制のポイントを解説します。
  • 会場:ラーニングスクエア新橋(東京・JR新橋駅より徒歩2分 )
  • 受講料(税込み):一般価格3万600円、読者特価2万1600円
  • 定員:120人

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——設計事務所が不動産仲介業務に参入するなど、設計者の「不動産」に対する関心が高まっています。設計者も不動産に踏み込むべきでしょうか。

 不動産の知識や感覚は、ある程度身に付けた方がよいでしょう。というのも今後は、設計者にはデザイン力以外にも、顧客の不安や悩みに応えられる様々な能力が、これまでより求められるはずだからです。特に「不動産感覚」は、顧客から求められるのではないでしょうか。

——なぜ「不動産感覚」が求められるのですか。

 日本は人口も世帯数も減少し、住宅の需要は減少します。にもかかわらず設計者の数は飽和状態で、既に設計者間の競争は激化しています。デザインに特化して仕事を得られる人はほんの一握りに限られ、ほとんどの設計者はデザイン力プラスアルファのコンサルタントにならざるを得ない。これがまず1点。もう1点は既存建物の改修が増えるからです。

 更地に立てるのなら、その更地である土地の建蔽率や容積率、斜線制限などの条件について理解すれば設計できます。ところが更地ではなく、既に建物が立っていれば、土地に加えて立っている建物についても理解しなければなりません。しかも建物のハードだけでなく、権利関係や税務などに対する理解もさらに必要になります。

 改修でよいのか、建て替えにすべきなのか。どのような改修を施すと節税できるのか、といった判断を、設計者が顧客から求められる局面もあるでしょう。

——例えば、どのようなケースが考えられるでしょうか。

 需要が高まっている二世帯住宅の例を挙げましょう。親などの被相続人と同居していた子どもなどの相続人が、自宅の敷地を相続する場合、相続する居住用宅地の相続税評価額を8割減にできます。減額対象となる居住用面積は330m2までです。

 相続する住宅を二世帯住宅に改修できれば、同じ敷地内に子世帯の住戸として別棟を新築するより大幅に減税されます。

 2014年1月以降はこの特例を適用する要件として、親世帯と子世帯の住戸間で自由に行き来できなくても構わなくなりました。13年末までは親世帯と子世帯の住戸が玄関を共有するなど、互いの住戸を自由に行き来できることが適用要件でした。既存の間仕切り壁に扉を設けて互いの住戸を行き来できるように改修した事例も珍しくありませんでした。14年の改正を知らなければ、無駄な改修を提案してしまいかねないのです。

 このように設計と相続税の負担には大きな関係があります。このレベルの知識は設計者として知っておくべきでしょう。

相続税の減免が認められる場合と認められない場合の例。実家と同じ敷地内でも、別棟の自宅を建て、親と同じ建物に住まない場合、相続税の評価減の特例を受けられない。実家を増築して、二世帯住宅にして親と同居すると、評価減の特例を受けることができる(資料:取材をもとに日経アーキテクチュアが作成)
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