4月に発生した熊本地震は、住宅業界に大きな衝撃を与えました。9月1日の防災の日に合わせて、熊本地震の実態から、これからの家づくりの在り方を考え直そうという人は多いことでしょう。日経ホームビルダーでは、熊本地震から次の世代の家づくりを学ぶべく、書籍「なぜ新耐震住宅は倒れたか」を発行しました。ここでは、3回に分けて記事の一部を紹介します。第3回は、浮き彫りになった1981年~2000年に建てられた住宅の耐震性の問題点について掘り下げます


65%が接合部に問題あり

 熊本地震は、多くの戸建て住宅が被害を受けた。なかでも、2000年以降に接合部や耐力壁に関する告示が加わった建築基準法の新耐震基準(2000年基準)の木造住宅が大きな被害を受けたことから、現行の建基法のあり方を検討する議論も進んでいる。

 だが、もう一つ、木造住宅の耐震性における課題が熊本地震で再び浮上した。それは、建基法が改正された1981年から2000年までの間に建てられた住宅の問題だ。

 これらは1981年以降に建てられていることから新耐震と判別されるが、中には現行の基準である2000年基準を満たしていない、いわば、耐震性能における既存不適格の住宅がある。この、既存“耐震”不適格の木造住宅が、熊本地震で倒壊した。

引き抜けた隅柱

(写真:日経ホームビルダー)
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 上の写真は益城町で4月24日に撮影したものだ。日経ホームビルダー取材班が現地でヒアリングしたところ、1996年に完成した木造住宅だという。

 現場の状況などからの推測ではあるが、この建物では主に次のような特徴が読み取れた。

 左上の写真は土台部分を撮影したものだ。アンカーボルトは施工してあるが、ホールダウン金物は見当たらない。土台は2方向から隅柱に差し込まれ、隅柱は基礎の上に直接立つ、柱勝ちのようだ。

 この上部を見たのが同右上の写真だ。引き抜かれた隅柱をよく見ると、Zマークのかど金物(CP・L)のようなものが見える。金物に残された5本のくぎの位置などから推測すると、下の図のような施工状態だったと考えられる。

写真から推測したかど金物(CP・L)の施工状態(概略図)(資料:日経ホームビルダー)
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 耐震改修などを数多く手掛ける金井工務店(埼玉県川口市)の金井義雄さんは、「隅柱の引き抜きへの対策が考慮されていなかった可能性がある。かど金物CP・Lの留め付け方が一般的なものではないなどの様子から、本来の耐力を発揮できなかったことも考えられる」と分析する。

 CP・Lの留め付け方は、日本住宅・木材技術センターが発行する「木造住宅用接合金物の使い方」を見ると、下の図の通りだ。図は隅部の留め付け例ではないので注意が必要だが、一般的には土台勝ちとして、L字の金物の長い方を上に、規定の間隔で留め付ける。

一般的なかど金物(CP・L)の施工状態(概略図)(資料:日本住宅・木材技術センター)
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 だが、この住宅が施工不良とも言い切れない。この当時は、国が定める明確な金物の規定がなかったからだ。「今は規定からどこに使うか明確に分かるが、当時の状況を考えると金物だけを見て良いか悪いか判断できない」と日本住宅・木材技術センター認証部の担当者は指摘する。

 確かに、住宅金融支援機構(旧・住宅金融公庫)が推奨仕様として発行していた当時の木造住宅工事仕様書を見ると、隅柱と土台との仕口例として、柱勝ち状態の「落としありかど金物2枚当てくぎ打ち」という仕様が掲載されていた。熊本の事例はこれともやや異なり、金物の取り付け方を見ると少し手法が違う。

 もちろん、この金物の施工方法と倒壊との因果関係は定かでない。だが、他の金物の使用状況などを併せて見ると、接合部については現行の基準を満たしていない可能性が高い。熊本地震ではこの事例のように、柱が引き抜かれ土台があらわになって倒壊した2000年基準以前の新耐震住宅が何軒か確認できた。

倒壊した住宅の隅部の土台は、一部が裂けたように剥がれていた。土台の様子からは、剥がれた部分のアンカーボルトの位置が室内側に偏っているようにも見える。建物は、柱ごと引き抜かれていた(写真:日経ホームビルダー)
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