「コンクリートのことはよく知らなかった」

――バクテリア自体の安全性はどのように考えているのですか。

 今回の材料に使ったバクテリアは、欧州の基準で安全性が確認できている種類に分類されるものです。「人への感染がない添加材」の区分に相当します。

――コンクリートと生物を結び付けるという斬新な研究は、どのようにして始まったのですか。

 私は、海洋生物の研究者でした。地球温暖化に伴う微生物の挙動などを研究していたのです。デルフト工科大学で自己治癒材料の研究プログラムがスタートすることになり、そこに呼ばれたのが研究を始めたきっかけでした。

 デルフト工科大学では微生物による土壌の安定化などの研究が行われていました。石灰石の主成分となる炭酸カルシウムをバクテリアが生成するメカニズムは、石灰石の地層などが酸性雨で浸食、風化されていく状況を改善するようなことに応用できるものです。

 同大学の同僚から、「コンクリートの自己治癒に微生物を使えないか」と聞かれたのですが、私自身は微生物による反応をコンクリートに生かすことなど考えてもみませんでした。そもそも、コンクリートのことはほとんど知りませんでしたから。

 ただ、コンクリートの研究者と語り合うとすぐに、微生物による反応をコンクリートにも応用できるのではないかと確信しました。

――後編に続く(日経アーキテクチュア・ウェブ会員の方が読めます。無料会員登録はこちら)――

 インタビューの後編では、バクテリアを使った自己治癒コンクリートの性能やコストなどについて、説明してもらう。




ヘンドリック・ヨンカース
1999年にオランダ・フローニンゲン大学の自然科学学部微生物環境生態学科で博士号を取得。同年から2006年までドイツ・ブレーメンにあるマックス・プランク研究所に勤務し、主任研究員を務める。06年にオランダ・デルフト工科大学准教授に就任。生物を活用したコンクリートの開発を手掛けて現在に至る。生物を活用した自己治癒コンクリートの開発では、15年に欧州特許庁が実施する欧州発明家賞にノミネートされた