東日本大震災で脚光を浴びた坂茂氏の紙管間仕切りシステム。避難所の環境を向上させるツールとして、東日本大震災では50カ所で計1800ユニットが活用された。そのシステムが4月24日、熊本地震の避難所にも設置された。実際に設置作業に携わった熊本大学大学院自然科学研究科・工学部建築学科の田中智之准教授に組み立ての様子や今後の課題などについて解説してもらった。(日経アーキテクチュア)


熊本大学大学院自然科学研究科・工学部建築学科准教授 田中智之

きっかけは研究室後輩からの一報

 熊本地震に伴い避難所に間仕切りシステム提供の緊急支援が開始されたのは、4月14日に発生したいわゆる“前震”から9日後、16日に発生した“本震”からは7日が経過した23日のことである。この支援は坂茂建築設計とNPO法人ボランタリー・アーキテクツ・ネットワーク(VAN)によるもので、紙管をフレームに用いた簡易間仕切りシステムを避難所に提供して設置するものだ。

 同システムは、2011年3月に発生した東日本大震災で50カ所、計1800ユニットを設置した実績を持つことから、既知の方も多いだろう。ここでは、詳細の説明は割愛する(関連記事:進化する紙管の仮設間仕切り)。

工具も金具も不要で簡単に組み立てられる紙管フレーム(写真:田中 智之)
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 少し時間を巻き戻そう。そもそもなぜ坂氏の活動の話が筆者のもとにきたのか――。

 筆者はもともと坂氏やVANの活動とは無縁だった。きっかけは前震の翌日の15日、早稲田大学の古谷誠章研究室OBで坂事務所のスタッフでもある田所真氏から連絡をもらったことだった。熊本で同システムを活用した支援活動を行うための現地サポートを探しており、その打診をしてきたのだ。

 この話に筆者はすぐに「できることは協力する」と返答した。早速、熊本市役所の都市建設局担当者を坂氏に紹介。熊本市側には、15日の時点で被害が比較的大きかった益城町を中心に、坂氏の活動を受け入れてほしいと申し入れた。

 だが16日、状況は一変した。1時25分、本震が発生して熊本市内のあちらこちらで甚大な被害が生じてしまったのだ。その後、熊本市内では避難施設利用者が急増。間仕切りシステムの具体的な提供計画が一気に動き始めた。