ものづくりの基本に立ち返る

 この記事で取り上げる3つのプロジェクトは、それぞれ異なる構造形式で壁を積み上げ、壁面に現れる素材の表情を、ありのままに見せることを意図して設計している。

 1つは、中空のコンクリートブロックを用いる「鉄筋コンクリート組積造(通称、RM造)」による大型建築。2つ目は、土を突き固める伝統の「版築(はんちく)」を、構造壁に進化させた住宅。そして3つ目は、地域に堆積する未利用素材の火山灰でつくったブロックを利用したもの。ブロックを積み重ねた「組積造」の住宅だ。

 それぞれが使う素材も、用いた構造形式自体も、決して新しくない。しかし、それらを用いて目指した建築にはほとんど前例がなく、3件とも「ものづくりの原点」に立ち返って、設計をスタートさせている。

材料を知るのが本来の設計

 紹介する「千葉・版築のいえ」で、土の強度試験などに協力した東京大学生産技術研究所の腰原幹雄教授の話が興味深い。「鉄筋コンクリート造や鉄骨造は、近代以降の工学に基づいて発達した。それに対して、土壁や組積造は、工学以前の時代に、職人たちが培った技術や経験則でつくられてきた」

 土壁や組積造が、現代の工学に乗らないと言っているわけではない。むしろその逆で、版築のいえでは、土を工学的に検討し、設計できるように、試験や計算を重ねている。そして、現時点では設計基準などが存在しない土壁でも、工学に乗せられる可能性はあるという。

 腰原教授は、それらを自身が長く普及に努めてきた現代木造に例えてこう話す。「近代以前からある木造も、少し前までは工学的にはよく分からなかった。しかし、今では工学的に解析や設計ができるようになっている。今は基準がない土や石、あるいはガラスや炭素繊維などの新しい材料でも、同じことができるはずだ」

 そのために必要なのが、まずは材料を知ること。そして、その特性をもとに設計や施工の手法を考察していくことだ。地元で入手しやすい安価な材料に着目することも欠かせない。その姿勢こそが、ともすると現代建築が忘れてしまいそうな「ものづくりの基本」といえる。次記事からは、ものづくりの基本に立ち返り、材料から構造、ディテールへと詰めていった3つの事例を紹介する。

出典:2017年7月27日 40~41 特別リポート[ディテール研究] 「積む」構造で素材を見せる
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