木のよさはエイジングに

―とはいえ、今でも木材を使う提案に不安を示すクライアントはいませんか。

 「何年くらいもつのか」、「色が変わるのをどう考えるか」といった質問は必ず受けます。それに対しては、「こんな対策を取れば30年は持ちます」とか、「色が変わるのは、この建築の持ち味です」といった説明をします。それで理解できない人に無理強いはしません。

 よく、「木は色が変わるから」と言って避けたがる人がいますが、真新しいときよりも、木というのは色が変わってきてからがいいんです。最近、私はそのことを積極的に発言するようにしています。自然素材である木がエイジングするのは当たり前で、そこに木のよさがあるのです。

 日本人がスギを多く使い始めたのは室町時代ですが、そもそもスギというのは、色ムラの激しい木で、色も変わります。言ってみれば“反工業製品”的な材料です。でも、日本人はそこに価値を見出して、茶室など様々なものをつくり出してきました。

 ところが、20世紀後半の工業化社会のなかで、日本人は色が変わったり、不均質だったりすると欠陥商品のように扱うようになってしまった。そろそろ本来の美意識を呼び覚まして、工業化社会から目覚めるべきでしょう。実際、若い人たちは、そういう感覚を取り戻しつつあって、ムラがあるとか、エイジングに対して抵抗を感じませんよね。

―木を生かす技術は、世界に誇れるものですね。

 海外で木材を使うとき、それを実感します。同じ図面でも、日本と海外では、でき上がるものの精度が全く違います。図面に描ききれないところを、日本の職人は黙っていても読み取って、微妙なところにまで気を遣い、つくってくれます。

ブザンソン芸術文化センター(2013年)
ブザンソン芸術文化センター(写真:Nicolas Waltefaugle)
(写真:Nicolas Waltefaugle)
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ブザンソン芸術文化センター(写真:Nicolas Waltefaugle)
(写真:Nicolas Waltefaugle)
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フランス東部の音楽都市ブザンソンに建てられた。木材を市松状に並べ、木漏れ日が差し込むような空間を生み出している

 そうした木の技術や文化は、海外でも高く評価されています。ところが、肝心の日本人のほうがその価値を十分に認識しておらず、生かしきれていません。私も、設計活動を通して、その辺りをもっと訴えていきたいと思っているところです。

隈 研吾(くま けんご)
建築家 東京大学教授 隈研吾建築都市設計事務所主宰
隈 研吾(くま けんご) 1954年生まれ。79年東京大学大学院修了。90年隈研吾建築都市設計事務所設立。2009年より東京大学工学部教授。フランスのBois Magazine国際木の建築賞(08年)など、国内外で受賞多数

企業に広がる 都市の木づかい

  • 定価:本体2,200円+税
  • 国土緑化推進機構/日本プロジェクト産業協議会(JAPIC) 監修
  • 日経アーキテクチュア 企画
  • A4判、104ページ
  • ISBN:978-4-8222-0044-2
  • 商品番号:239910
  • 発行日:2015年4月13日