建物を“身内”にする地域材

―どのようにして、そうした発想に行き着いたのですか。

 20年ほど前になりますが、地方の建物ばかりを依頼される時代がありました。その一つが、スギの産地である高知・梼原町です。雲の上のホテルと梼原町地域交流施設(いずれも1994年)を皮切りに、梼原ではこれまでに複数の建物を設計しました。どの建物も地域材の使い方がテーマの1つでした。

梼原町総合庁舎(2006年)
梼原町総合庁舎(写真:生田 将人)
地元の木材を、構造や内外装に多用し、高い環境性能を確保した建物。隈氏は高知・梼原町で、雲の上のホテル(1994年)、木の橋ミュージアム(2010年)なども設計している(写真:生田 将人)
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 そのなかで気付いたのは、「木材は地域につながる」という点です。地元の人たちにとって、新しくできる建物は“よそ者”です。ところが、地域材は、そのよそ者を“身内”に変える力を持っているのです。地域材を使えば、自ずと地元の林業関係者や職人などと一緒に仕事をする。地域との付き合いも深くなる。すると、新しい建物が、途端に地元の共感を得られるようになるんです。

 梼原での体験は、建築が人間のネットワークをつくる力を持つことを教えてくれました。それ以来、自分のなかで建築がとても楽しくなったし、積極的に木材を採り入れるようになりました。そして、地方だけでなく、都会でも木材を使うようになったのです。

ONE表参道(2003年)
ONE表参道(写真:吉田 誠)
都心の建物のファサードで、隈氏が本格的に木材を使った最初の事例。建物を覆うルーバーは、長さ8.4mのカラマツ集成材。4本ごとにスプリンクラーを設置して、耐火性能を確保している(写真:吉田 誠)
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