「木造」は融資に影響しない

 岡崎氏からの一通りの説明を受けて、融資を行った東北銀行地域応援部地方創生推進室室長の中村佳久氏、地域応援部副調査役の安達直哉氏らを交えて、研究会の委員らが質疑や意見交換を行った(以下、敬称略)。

 

柳瀬委員(三菱地所レジデンス)
木造でコストが安くできることは分かった。管理コストについてRC造との比較は行ったのか。また維持管理費はどれくらいか。

岡崎(オガールプラザ)
RC造との比較は行わなかった。維持管理費は、当初の見込み通りで年間約800万円だ。

柳瀬委員(三菱地所レジデンス)
木造であることで、テナントに向けて賃料をより高くできるか。

岡崎(オガールプラザ)
木造にすることで賃料が上げられるということはない。ただし使い勝手などはアピールできる。柱と梁の構造なので、壁を比較的自由に動かせることは長期を見据えるとメリットとなる。木造で気をつけるべきことは、断熱性能と防音性能だ。木は軽いので、コンクリートの遮音性にはかなわない。

 

小林委員(竹中工務店)
木造にしたことについて、町民の木造への評価はどうか。

岡崎(オガールプラザ)
紫波町では公共建築物を木質化するという政策をとっているため、オガールプラザについて特別の意見は聞かれない。ただ、紫波町として、地元の建築に地元の木材を使うことで産業として回ってきており、喜んでいる人はたくさんいるだろう。

 

服部(林野庁)
木造の法定耐用年数が22年、RC造だと39年と、構造形式で耐用年数が異なる(店舗用の場合)。この耐用年数の違いは融資する側として影響したのか。木造であることで償還を早めなければならないとなると、事業計画上、高い利回りを約束しなければならないことになる。

中村(東北銀行)
業務を引き継いだため詳しくは分からないが、融資の相談のなかで、法定耐用年数は検討の対象にはしなかったのではないか。あくまで事業計画について相談に乗るなかで、10年で収支が取れるよう、テナントの誘致を含め相談に乗ったと聞いている。

岡崎(オガールプラザ)
22年で貸せるという話はあったと記憶している。ただし、民都からの出資金の償還が10年からという条件もあったので、借り入れの返済の方が出資金の償還よりも先という意識もあって、そのように設定した。とはいえ、銀行からの借り入れについては、これまでの事業実績なども影響するだろう。

 

今井委員(アーク不動産)
建物の構造形式によって、例えば木造であることで、貸し出し金利が上がるなど影響はあるか。

安達(東北銀行)
構造の違いによって、貸し出し金利を上げることはない。事業計画について、相対的に見て判断することだ。

今井委員(アーク不動産)
今回のように出資者が「安定株主」で地方創生も意識したプロジェクトであれば、償還期間が短い木造でも抵抗は少ないだろう。一方、REIT(不動産投資信託)などでは、償還を少なく、配当を大きく取りたいという思惑もある。そうしたケースによっては、木造はネックになるように思われる。

安達(東北銀行)
木造に限らず、地方創生という観点からも、必要であれば融資に境目はないと考える。

 

藤田委員(中大規模木造プレカット技術協会)
地場産材のカラマツとスギを使っているが、調達に苦労はなかったのか。

岡崎(オガールプラザ)
オガールプラザでは約600m3の地場産材を使ったが、確保には苦労した。途中で東日本大震災もあった。実は、紫波町にはJAS規格の木材加工工場がない。沿岸部の加工工場に持って行き、加工してもらった。幸い、工場は津波で流されなかったので工事に影響はなかった。

研究会委員らの質疑に答えるオガールプラザ代表の岡崎正信氏(写真:井上健)
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建築概要

  • 建物名称:オガールプラザ
  • 所在地:岩手県紫波郡紫波町紫波中央駅前二丁目3番地3
  • 主用途:図書館・地域交流センター・子育て支援センター・産直・診療所・飲食店・物品販売店
  • 地域・地区:近隣商業地域、法22 条区域
  • 建蔽率:68.91%(80%)
  • 容積率:103.30%(200%)
  • 前面道路:20m
  • 駐車台数:86台
  • 敷地面積:5640.02m2
  • 建築面積:3887.10m2
  • 延べ面積:5826.02m2
  • 構造:木造、一部鉄筋コンクリート造
  • 階数:地上2階
  • 耐火性能:準耐火建築物
  • 各階面積:1階3311.35m2、2階2481.29m2、塔屋階33.38m2
  • 基礎・杭:直接基礎
  • 高さ:最高高さ12.70m、軒高8.90m、階高4.20m、天井高3.75m
  • 主なスパン:5.46×5.46m
  • 発注者:オガールプラザ株式会社
  • 設計・監理者:近代建築研究所・中居敬一都市建築設計JV
  • 設計協力者:ホルツストラ(構造)、化学応用冷暖研究所(設備)ほか
  • 施工者:佐々木建設・橘建設JV
  • 施工協力者:三建設備工業(空調・衛生)、ユアテック(電気)、協同組合遠野グルーラム(木構造)
  • 設計期間:2010 年11月~11 年8月
  • 施工期間:2011 年9月~12 年5月
  • 開業日:2012 年6月20日
2016年度第2回「中高層建築への木材利用促進の可能性について検討する研究会」

委員(敬称略)

伊藤雅人(三井住友信託銀行不動産コンサルティング部審議役)、今井邦夫(アーク不動産開発事業部部長)、内海彩(KUS代表取締役、チーム・ティンバライズ理事)、後藤健太郎(日本不動産研究所研究部次長)、小林道和(竹中工務店木造・木質建築推進本部副部長)、近藤昭(桧家ホールディングス代表取締役社長)、出口俊(住友林業木化営業部営業チーム係長)、藤田譲(中大規模木造プレカット技術協会監事)、松永安光(近代建築研究所代表取締役、HEAD研究会理事長)、柳瀬拓也(三菱地所レジデンス都心・城南用地部用地第二グループ主任)

オブザーバー(敬称略)

三村翔(三菱地所住宅業務企画部副主事)

林野庁(敬称略)

服部浩治(林政部木材産業課木材製品技術室課長補佐)、原章仁(林政部木材産業課木材製品技術室住宅資材技術係長)、西尾悠佑(林政部木材利用課木質バイオマス第1係長)

事務局

安達功(日経BP社日経BPインフラ総合研究所所長)、畠中克弘(日経BP社日経BPインフラ総合研究所上席研究員)、小原隆(日経BP社日経BPインフラ総合研究所上席研究員)、米倉肇(日経BP社クライアントマーケティング2部次長)、鈴木はるか(日経BPコンサルティングブランドコミュニケーション部)、村島正彦(studio harappa代表)

<訂正>3ページ目の本文31行目「図書館が賃借する紫波町からの家賃収入と、」を削除しました。(2016年10月19日17時50分)
2ページ目の上から3枚目の写真キャプションの大梁の高さを390mmに訂正しました。(2016年10月20日17時20分)