「10年で償還してほしい」

 次に、オガールプロジェクトをけん引した中心人物で、オガールプラザとオガールベースの代表を務める岡崎正信氏から話を伺った。

 岡崎氏は大学卒業後、政府系法人や旧建設省の勤務を経て、紫波町で建設業を経営する父親が亡くなったことを契機に、29歳のときに紫波町に戻ってきた。その後、紫波町のまちづくりに関わるようになり、当時の町長と共にオガールプロジェクトに関わった。

オガールプロジェクトの経緯について語るオガールプラザ代表の岡崎正信氏。左は、オガールプラザの設計を行った松永委員(写真:井上健)
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 オガールプラザはなぜ木造建築としたのか。「金融機関側からの条件で、手元資金(Cash Position)を高めなければならないという理由があったからだ」と岡崎氏は話す。

 岡崎氏が代表を務めるオガールプラザは、政府系金融機関の民間都市開発推進機構(以下、民都)から6000万円の出資を受けた。ただ、民都からは「10年以内に配当を出すこと」を求められた。その代わり、経営に関しては一切口を出さないという条件だった。

 そして2つ目の条件は、「開業して10年以降はすみやかに出資金を全額償還する」ことだった。「つまり10年後には6000万円を返せということだ」(岡崎氏)。

 出資に加え、銀行からの融資も得た。岡崎氏側からの「無担保無保証で貸し付けてくれ」という要望に対して、融資を行った東北銀行から出された条件は「その代わり、10年で償還してほしい」というものであった。つまり、出資、融資を実施した2つの機関から、配当や償還など、なるべく早く手元資金を用意できるように求められたわけだ。

 これら出資者や貸し付けを行う金融機関の条件をクリアするのに、木造が有効な手段となった。

 「木造の償却期間は、RC造やS造に比べて約半分になる。これは、例えば約10億円の不動産投資をした場合、S造であれば損益計算上、年間2000万円ほどの損金算入ができる。これを木造にすることで、倍の年間4000万円ほどの損金算入が可能になる。つまり、最初から入居率が100%で稼げる不動産であれば、減価償却期間が短い木造の方が、損益計算上、投資効果が高くなる。企業は赤字決算であれば税金を払う必要がないが、手元資金(CP)は残る。したがって、減価償却の面から考えると、木造の方が圧倒的に有利だ」と岡崎氏は説明する。

 オガールプラザには、民間のマルシェや飲食店などからのテナント料が入ってくる。そこから融資を受けた東北銀行へ金利と元本を含めた返済を行っている。また、5年目となる17年からは累積黒字に転換すると予測されており、予定を早めて民都への配当も行う予定だという。

 岡崎氏は、木造建築の不動産運営上の課題も指摘する。「計画時、オガールプラザには入居したいというテナントが多く集まった。2階建てを3階建てにしてテナントを増やす方法もあったが、木造建築は2階建てを3階建てにすると建設コストが著しく上がる。賃料を高く取れない3階を実現するために、逆にコストが上がっては元も子もない。やむなく2階建てにとどめる決断をした」。