日経BPインフラ総合研究所が主催する「中高層建築への木材利用促進の可能性について検討する研究会」は岩手県内で実地研究を行った。中大規模木造建築のコストや資金調達の在り方、材料、工法などについて関係者の話を聞いた。まずは9月26日に見学した「オガールプラザ」を報告する。建築コストが坪当たり40万円台の公民連携施設だ。

 東京駅から盛岡駅まで、東北新幹線「はやぶさ」に乗ると、約2時間。盛岡駅でJR東日本の東北本線に乗り換えてさらに約20分で紫波中央駅に到着する。

 岩手県紫波町の人口は約3万4000人。紫波中央駅の西側、10.7haの町有地は10年にわたって塩漬けにされていた。ここに「オガールプロジェクト」が展開している。オガールプロジェクトの最初の施設「オガールプラザ」は、2012年6月に開業した。以降、公民連携の先駆事例として全国から視察が相次いでいる。

JR紫波中央駅から西に1区画進むと、オガールプロジェクトの地区に入る(写真:井上健)
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 オガールプロジェクトのマスタープラン策定と、オガールプラザの設計を担当した1人である近代建築研究所代表の松永安光氏は、「中高層建築への木材利用促進の可能性について検討する研究会」の委員でもある。松永氏がマスタープラン(「紫波町公民連携基本計画」09年策定)づくりに関わったのは、08年のことだ。

 「マスタープランの肝は、駅から真っすぐ延びる大通りの先に広場をつくり、その両脇に施設を配置したこと。広場に面する施設の1階部分はピロティのアーケードにして、にぎわいをつくりだそうと考えた」と松永氏は説明する。米国フロリダ州のボカラトンにある「マイズナーパーク」や、カリフォルニア州サンノゼにある「サンタナ・ロウ」などのショッピングモールに着想を得たものだという。

 オガールプラザは駅側から見て左側に建つ。紫波町の情報交流館(図書館と地域交流センター)、子育て支援センター、民営の産直販売所やカフェ、居酒屋、学習塾などのテナントが入った複合施設だ。右側には、14年に完成したオガールベースが建つ。設計は、らいおん建築事務所(東京都豊島区)・木村設計A・T(岩手県花巻市)JVだ。宿泊施設とバレーボール専用体育館、テナントスペースとなっている。

 オガールプラザとオガールベースに挟まれた空間には、松永氏がマスタープランの「肝」と説明する広場が広がる。広場の設計は、オンサイト計画設計事務所(東京都港区)が担当した。広場には四阿(あずまや)が点在し、水場やキッチンとしても使える簡易な作業台を設けた。バーベキューに対応するなど、町民にも活発に使われている。

 オガールプラザ、オガールベースともに、松永氏らが策定したデザインコードに従い、広場側に面してピロティ形式のアーケードを設けた。「広場では、町民の結婚式などさまざまなイベントが行われている。両脇に人々が歩いて通行するアーケードがあることで、イベントの観覧席にもなり、にぎわいづくりに一役買っている」(松永氏)。
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広場側はピロティ形式のアーケードを設けている。近代建築研究所代表の松永安光氏から説明を受ける「中高層建築への木材利用促進の可能性について検討する研究会」の委員など(写真:井上健)
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