東京都目黒区のホテル雅叙園東京において、「木材活用フォーラム2017」が2017年11月に開催された。同フォーラムで開かれた3つのパネルディスカッションの概要を紹介する。セッションの2番目のテーマは、「中高層建築は木材をこう使う」。日経BP総研社会インフラ研究所上席研究員の小原隆の司会で議論を行った。

(撮影:渡辺 慎一郎)
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パネリスト(五十音順)
  • 三菱地所設計 構造設計部 兼 デジタルデザイン室 エンジニア 海老澤渉氏
  • 竹中工務店 木造・木質建築推進本部 副部長 小林道和氏
  • 日本CLT協会 業務推進部 部長 中島洋氏
  • 三菱地所 住宅業務企画部 兼 新事業創造部CLTユニット 主事 柳瀬拓也氏
モデレーター
  • 日経BP総研 社会インフラ研究所 上席研究員 小原隆

小原:木材の利用拡大に向けて期待されるのが、中高層木造の普及です。現在、設計中の仙台市のプロジェクトを題材に、中高層木造の設計のポイントを読み解いていきたいと思います。まず、事業者の三菱地所さんから順に、プロジェクトの概要や設計を説明してください。

柳瀬:当社は現在、仙台市泉区で10階建ての賃貸集合住宅の計画に取り組んでいます。林野庁の補助事業に採択され、設計を進めている段階です。建物は耐火建築物で、主たる構造を鉄骨(S)造で組み、床と壁にCLT(直交集成板)を用います。

海老澤:従来、10階建てクラスの賃貸集合住宅といえば鉄筋コンクリート(RC)造でした。今回は、工期やコストを見極めながら検討した結果、S造とCLT床の混構造にしました。CLT床は、既存の大臣認定の仕様に、新たに開発した部材を組み合わせて、2時間の耐火性能を確保しています。また、竹中工務店が2時間耐火で大臣認定を取得する耐火集成材「燃エンウッド」の柱も、初めて採用する予定です。

小原:木造を取り入れるメリットはどこにあると考えていますか?

柳瀬:設計中なので確証はありませんが、工期短縮になると考えています。RC造の場合、各階のコンクリートを下から順に打設していきますが、この構造は鉄骨を組み上げたらCLT床を敷設するだけなので、工期短縮になるはずです。投資する事業者にとっては、初期投資を早く回収することが重要なので、工期短縮は大きな意味を持ちます。

小原:CLT床を使った範囲はどのように決めたのですか?

海老澤:集合住宅の場合、キッチンや浴室、バルコニーなど、床を貫通する配管類が少なくありません。しかし、耐火被覆したCLT床に穴を開けると、防火上の弱点になりかねません。そのため今回はそうした箇所でCLTを使うのを避けました。

小林:鉄骨フレームとCLT床との取り合いの耐火性能をどのように確保するかも課題でした。様々なディテールを検討した結果、CLTを使う範囲が決まったという側面もあります。