中大規模木造には、新しい木質材料や技術工法が次々と登場しており、また法制度の整備も進んでいる。中大規模建築の木造化・木質化について防火の観点から、桜設計集団代表の安井昇氏が解説する。

燃えても毎分1㎜のゆっくり
木造のコツは「燃え抜けない」設計

桜設計集団代表、早稲田大学招聘研究員、NPO法人team Timberize副理事長 安井 昇氏(撮影:渡辺 慎一郎)
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 製材や集成材、LVL(単板積層材)、CLT(直交集成板)など、最近は木材の種類も豊富になりました。そうした木材を使う箇所は、「構造体(木造化)」、「内外装(木質化)」、そして「家具類」の大きく3つに分類できます。これらのうち、建築基準法の規定がある構造(木造化)と内外装(木質化)についてお話ししたいと思います。

 まず、知ってほしいのは、火災発生のメカニズムです。火災というのは、「可燃物」と「酸素」と「燃焼(熱)エネルギー」の3つがそろうと発生し、その状態が続くと燃え広がります。

 木造化・木質化のポイントは、可燃物である木材に火が着いたとしても、燃え続けないように設計することにあります。建築基準法が求めているのは、火災時でも「燃え抜けないこと」、「建物が倒れないこと」であり、「燃えないこと」ではありません。

 では、燃え抜けないためには、どうすればよいのか。参考になる1つの実験を紹介しましょう。30mmと24mmを重ねた総厚さ54mmのスギ板を隙間なく張った壁をつくり、その片面に火を付けて、燃焼の経過を観察した実験です。着火した面は勢いよく燃え始め、10分後の表面温度は約700℃に達しました。ところが、その裏面は燃えないどころか、1℃も表面温度は上がりませんでした。

 木は1分間に1mm程度の速さで、ゆっくりと燃えます。その間に、スギ板の表面が炭化して断熱材のようになります。さらに、木は熱伝導率が低いので、裏側まで熱が伝わってこないのです。

 ここに、燃え抜けない木造のヒントがあります。一定の厚みがあり、火が通る穴が開いていなければ、木材は燃え抜けないのです。火災発生の要因の1つである熱エネルギーも伝わってきません。

 実は、今も残る京都の町家に同じようなつくりが見られます。隣家と壁一枚でつながり、穴は開いていません。その壁は、熱伝導率の低い土壁です。たとえ1軒で火事が出ても、隣に燃え抜けていかないようになっているのです。

中大規模木造の普及に向けて法改正や技術開発が活発化

 内外装の木質化に対しては、建築基準法に「内装制限」があります。居室の壁・天井には「難燃材料」が求められるので、床から高さ1.2mまでの壁でしか木材を使えないと思う人が多いでしょう。しかし、そうした居室でも、天井を石こうボードなどの「準不燃材料」にすれば、壁全面を板張りにできるようになっています。2000年建設省告示1439号の規定によるものです。

 木造化・木質化に関わる法改正は続いています。2015年には建築基準法21条が改正され、延べ面積3000m2超の大規模建築でも、従来の防火壁よりも高性能の壁などで3000m2以内ごとに区画すれば木造でつくれるようになりました。法27条の改正では、それまで耐火建築物に限られた3階建ての学校などを、耐火もしくは1時間準耐火構造の木造で建てられるようになりました。

 そして、まもなく耐火構造と準耐火構造の告示が追加され、耐火・準耐火の木造を、より設計しやすくなります。さらに、国土交通省により2017年度からの5カ年で、CLTや鉄筋コンクリート造、鉄骨造などの混構造で中高層建築を建てるための技術開発も始まっています。こうした法改正や、各種の木質材料を生かして、中大規模の木造・木質建築が建ち並ぶ楽しい街を、みなさんと一緒につくっていきたいと思います。