サステナブル・デザインでも世界トップクラス

 香港国際空港は1998年の開港当初から、地球環境配慮の点でも世界屈指の空港を目指すと宣言している。まだサステナビリティーという言葉自体も一般的ではなかった時代である。この宣言に基づき、ミッドフィールド・コンコース部分についてもサステナブル・デザインは重要課題と位置付け、香港の建築環境評価制度であるBEAM Plusでゴールド認証を取得した。

 パッシブデザインを行う上で、建築の方角と外装の設計は重要となる。ミッドフィールド・コンコースは、南北に長い形状をしており、まずは南面からの日射を防いだ。香港では夏の正中高度が90度を超え、太陽が北から差す期間があるが、光の拡散装置を設けたトップライトにより、北側から光を取り入れている。

 東面はガラスファサードでターミナル1を見せて空港としての一体感を持たせ、西側はガラス面を極力少なくしたうえで、シェードで日射遮蔽している。東西のガラスは日射の40%をカットする性能を有したものだ。

トップライト部分の断面図(資料:Arup)
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 これらの工夫以外にも、1200m2の太陽光発電パネルの設置。建材は、極力地場のものを用い、20%以上が中国南部、台湾などから原材料を調達したものである。木材は50%以上がFSC(森林管理協議会)認証を取得したもので、環境保全や地域社会の利益にかなう形で生産された材が使用されている。また、将来のミッドフィールド・コンコース内部のレイアウト変更を鑑みて、内装の解体や構造の補強が簡単にできるような仕様としてある。

 空調は水冷式だが、冷却塔の補給水は、トイレや厨房の排水、雨水、空調の結露水などを再利用して賄われている。昨年2016年には、香港のグリーンビルディング・アワードにて、新築ビルのグランド・アワードを受賞した。

本プロジェクトは香港空港公団にとって初の大規模BIMプロジェクトであった。設計が始まった2010年当時は、まだBIMの設計手法や環境が整備されていない時期であったが、次第に各専門分野間の調整に活用された。BIMモデルは施工者にも渡され、製作や施工の検討にも使われた(資料:Airport Authority Hong Kong)
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 2050年までに、地球温暖化を引き起こす要因のうち15%は、航空輸送によるものになると言われている。単に航空機の燃料だけでなく、空港の運営にかかるエネルギーも見過ごすことはできないだろう。また、エアバスA380のような新しい航空機の開発に対応すべく、空港の施設・設備・運用面での早急な改修・対応も求められる。

 世界的な旅客数増、空港民営化のトレンドのなかで、将来需要の変化に伴う増改築の柔軟性や環境配慮に対する要求がこれまで以上に高まっている。

アラップの発表資料(英語)

プロジェクト概要

  • クライアント:Airport Authority Hong Kong(香港空港公団)
  • 規模:10万5000㎡
  • 実施設計・コンサルタント:Arup + Mott MacDonald
菊地 雪代(きくち・ゆきよ)
菊地 雪代(きくち・ゆきよ) アラップ東京事務所アソシエイト/シニア・プロジェクト・マネージャー。東京都立大学大学院工学研究科建築学専攻修了後、設計事務所を経て、2005年アラップ東京事務所に入社。一級建築士、宅地建物取引士、PMP、LEED評価員(O+M)。アラップ海外事務所の特殊なスキルを国内へ導入するコンサルティングや、日本企業の海外進出、外資系企業の日本国内プロジェクトを担当。