80年代の木造大空間ブームを反面教師に

 住宅改修事例は十年以上前から取り上げていますが、かつてはその住宅でしか実現し得ない「特殊解(個別解)」の事例が多かったように思います。それに対して今回の特集で取り上げた事例は、デザイン自体はまねできない(あるいはまねする意味がない)としても、何かしら別の改修にヒントになる要素があるであろうものを取り上げています。詳細は特集をご覧ください。

 「特殊解よりも、まねしたくなるものを」という観点は、住宅改修に限らず、これからの日経アーキテクチュアにとって、とても重要であると考えています。実は、連載「都市木造入門〈防耐火設計編〉」にもご協力いただいているチーム・ティンバライズ理事長の腰原幹雄氏(東京大学教授)から、「都市木造の普及には、まねをしたくなる木造建築がもっと増える必要がある」としばしば聞かされているからです。

 腰原氏の主張をざっくり要約するとこういう内容です。1980年代終盤、ふるさと創生のムーブメントに載って、地方都市に大空間の体育館や交流施設がたくさんつくられました。その多くが大断面集成材と特殊な接合金物を用いて建てられ、日経アーキテクチュアをはじめとする建築専門雑誌で大きく取り上げられました。けれども、ほとんどはそのプロジェクトに限定された「まねしようのない」ディテールやコストで出来ており、補助金がなくなると、木造への関心は潮が引くように薄れていきました。腰原氏は、今の木造のムーブメントで、「同じ轍(てつ)を踏んではならない」と言います。

 今号の「都市木造入門〈防耐火設計編〉」のテーマは、「燃えしろ設計で柱・梁を準耐火構造に」です。まさに、知っていればだれもがまねできる木造設計のノウハウです。今までこの連載を読んでいなかった方も、この回だけはぜひお読みください。もちろん、一度読めば今後も読まずにはいられないと思いますが……。

 本当のムーブメントは「特殊解」からは生まれない──。今後もそれを意識しながら、情報を発信していきたいと思います。

出典:2016年12月8日
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