日経アーキテクチュア12月8日号は「住宅特集」の号です。日経アーキテクチュアというと「非住宅系」というイメージを持っている方も少なくないようですが、ほぼ毎号の「フォーカス住宅」欄のほか、今回のような住宅特集を年に4回掲載しています。今号のテーマは「プロもうなった! ユーザーに刺さる改修」です。

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 特集のサブタイトルは、「ストック市場を切り開くターゲット志向の提案」。継続的に住宅改修に取り組んでいる事業者たちが「なるほど」とうなった住宅改修事例を取り上げ、事業スキームも含めて紹介しました。これまでも住宅改修の特集は行ってきましたが、今回は「事業者目線→ビジネスになる→市場を拡大する」という観点でまとめていることが特徴です。

 なぜ、改修事例の紹介で「市場拡大」を意識する必要があるのか。今回の特集でも引用していますが、本誌4月14日号の特集「五輪後に勝つ!」の取材過程で、何人ものアナリストから「ストック市場の拡大は甘くない」という話を聞いたことが背景にあります。例えば、野村総合研究所経営革新コンサルティング部の榊原渉・グループマネージャーは、こう言い切りました。「リフォーム市場が自然に拡大すると考えるのは甘い。人口や世帯数が減るのだから、成り行き任せでは、人が住まない空き家が増えるだけだ」

4月14日号特集に掲載したリフォーム市場と新設住宅着工の予測グラフ。野村総合研究所が昨年6月にまとめた調査リポートでは、2030 年の新設住宅着工戸数は53 万戸に減少すると予測。住宅リフォーム市場も、約6兆円の横ばいで推移するとしている。成り行き任せでは期待のリフォーム市場も横ばいだ(資料:実測値は国土交通省「建築着工統計」、予測値は野村総合研究所)
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 榊原氏は、「中古住宅やリフォーム向けの住宅ローンをもっと借りやすくすべきだ」と主張します。一般に、中古住宅やリフォーム向けのローンは新築向けと比べて金利が割高で返済期間が短くなっていますが、もっと割安で返済期間に余裕があるローンを整備すべき、と指摘します。他のアナリストからも、融資や品質確保の仕組みを改善すべきという指摘は様々ありましたが、「市場を広げるには官民が知恵を絞り、良質な中古住宅が流通しやすい環境を整えるべき」という点ではほぼ一致していました。

同じく4月14日号特集に掲載したグラフ。日本の中古住宅の流通シェアを、欧米先進諸国と比較した。日本では中古住宅のシェアが約15%にすぎないが、米国では約90%を占める(資料:国土交通省「我が国の住生活をめぐる状況」)
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 ただ、「流通しやすい環境」が今より改善されたとしても、魅力的な商品(改修実例)が提供されなければ市場は動きません。そこで今回の特集では、デザイン提案と事業スキームをセットで紹介することにしました。

 例えば、所有する賃貸集合住宅の改修を青木茂建築工房に継続して依頼している福岡県大野城市の賃貸管理会社、光ビルのケースです。同社は、今春改修工事が完了した賃貸集合住宅「光第2ビル」で、長期優良住宅の認定を取得しました。これは設計上の工夫に加え、青木茂建築工房が提携する金融機関が、改修後の建物の耐用年数を第三者調査機関による推定調査で判断するというスキームがあったことで実現したものです。

 光第2ビルでは、工事後の残存寿命が50 年と推定され、詳細な家暦書の作成などにより、新築と同様の35年間の融資が認められました。バリアフリー化のために増築したエレベーターシャフトと、白と黒の溶融アルミ亜鉛合金めっき鋼板で一新した外装などにより、見た目にも誰もが「新築」と疑わないものに生まれ変わっています。