【開発】下鴨神社に定借マンション、竹中の設計施工で

2015/03/05

日経不動産マーケット情報

 京都市左京区にある下鴨神社は、敷地の一部に50年間の定期借地権を設定して分譲マンションを開発する。事業主は賀茂プロパティーズワン合同会社。CRE(企業不動産)戦略や不動産証券化のコンサルティングなどを手がけるエスアイ・アセットサービス(本社:港区)の小野祥吾社長が職務執行者に就いている。設計・施工は竹中工務店が手がける。

マンションの完成予想図。桂離宮や二条城二の丸御殿などを参考に、建物を8棟に分けて配置。樹木と共存させる(資料:下鴨神社)

完成予想図とほぼ同じ方向に撮影した現在の様子(写真:下鴨神社)

 神社は年間8000万円の借地料を得て、社殿の修復や周辺の環境整備に充てる方針だ。今後の事業体制について、エスアイ・アセットサービスは「現時点で話せることはない」としているが、同社はプロジェクトマネジメント業務などを担い、マンション販売会社などと提携する可能性が高い。

 計画地は、下鴨神社が所有する約12万m2のうち、南端に位置する9647m2のエリア。京阪・叡山電鉄出町柳駅から徒歩5分の場所だ。計画地内に8棟で構成する地上3階建て、計107戸のマンションを建設する。1戸あたりの専有面積は80m2ほどになる。2015年11月に着工し、2017年2月の竣工を予定している。

 京都市の特別修景地域に指定されているため、建物高さを10mに抑えるほか、日本瓦をふいた和風の外観とする。さらに、神社の境内に広がる「糺(ただす)の森」と同じニレ科の樹木を植栽する。

マンションの建物計画。和風の外観にして、景観を保全する(資料:下鴨神社)

21年ごとの遷宮に30億円

図中に「第三期」と示す部分がマンションの計画地(資料:下鴨神社)

 下鴨神社は古都京都の文化財の一つとして1994年に世界遺産に登録されたが、計画地は通りを1本挟んで世界遺産の区域外となっている。

 計画地には現在、幅6mの参道が南北に通り、参道の東側には講堂などを備えた研修道場が立つ。1968年に竣工した地上3階建て、延べ床面積1955m2の建物だ。一方、参道の西側は有料駐車場として使われている。1990年ごろまでは、神社が収益を得るためにゴルフ練習場があった。

 下鴨神社はマンションの計画地を神社の境内ではなく、境内に隣接したエリアと位置付ける。世界遺産周辺のバッファーゾーンとして、糺の森と一体的に整備する方針だ。

 同神社はマンションの開発によって借地料収入を得なければならない理由として、以下の二つを挙げている。

 一つは21年ごとに約70棟に及ぶ社殿を修復したり、屋根の檜皮(ひわだ)をふき替えたりする「式年遷宮」の費用を捻出するためだ。2015年4月には34回目の遷宮が行われる。

 遷宮には1回で約30億円の費用がかかるものの、国から受け取る補助金は8億円ほど。残りの約22億円は、企業などからの寄付で賄わなければならない。ところが、リーマン・ショックの影響などで、現在は必要額の半分ほどしか集まっていないという。

 もう一つは、マンションの計画地は古くから糺の森の一角を占めているにもかかわらず、文化財指定地や世界遺産の区域から外れ、環境の維持や保全に公的な補助が受けられないからだ。計画地内にある研修道場は老朽化しているうえ、耐震性にも問題がある。しかし、神社独自の予算では解体さえままならないという。樹木の管理も行き届かず、糺の森の植生とは異なる樹木が生い茂り、荒れた状態となっている。

社家町の復活なるか

 「寄付頼みの収入では今後、文化財として神社を次世代に残すのが難しくなる」。このように考えた下鴨神社は数年前から、所有する敷地の活用を模索。エスアイ・アセットサービスの小野社長らに相談を持ちかけていた。

 「条例などに従って景観を維持し、今回の計画によって世界遺産の価値がむしろ高まるように事業を進めてほしい」と京都市の担当者は話す。神社はマンションの開発に合わせて、参道のアスファルト舗装を石畳風の舗装や砂利敷きに変更。道幅も現在の2倍以上となる14.5mに広げる計画だ。

参道の整備イメージ。マンションの開発に合わせて、既存の研修道場は取り壊す(資料:下鴨神社)

下鴨神社は計画地の周辺でも、参道沿いにあった社家町の景観保全に取り組む(資料:下鴨神社)

 「マンションには神社の歴史に関心のある人々に住んでもらい、伝統祭事の支援者となってほしい」と下鴨神社は期待を寄せる。神社の周囲にはかつて、神職や宮大工などが暮らす社家町(しゃけまち)があった。今回のマンション開発は、現代版の社家町の復活ともいえそうだ。


[開発の概要]
開発名:糺の森第三期整備計画
所在地:京都市左京区下鴨泉川町60(住居表示)
最寄り駅:京阪・叡山電鉄出町柳駅徒歩5分
面積:土地9647m2、延べ床未定
構造:RC造
階数(地上/地下):3/0
用途:住宅
戸数:107
事業主:賀茂プロパティーズワン合同会社(エスアイ・アセットサービスのSPC)
設計者:竹中工務店
施工者:竹中工務店
工期:2015年11月~2017年2月

瀬川 滋日経不動産マーケット情報