【注目環境ビル】(2)呼吸する外皮、飯野ビルディング

2011/07/21

日経不動産マーケット情報

■奥行き80cmのダブルスキン(外皮)が呼吸するように外気を導入
■ビル運用段階の想定エネルギー消費量が932(MJ/m2・年)と極めて少ない
■建物設備の省エネ効率を表す指標がトップクラスの水準

 窓部の奥行き感と、格子状のデザインが醸し出す端正さが外観の特徴だ。飯野海運の飯野ビルディングは、「呼吸する外皮」によって事務所部分の空調に使用するエネルギー消費量の約4割を削減する。

 地下鉄「内幸町駅」に地下通路でつながり、将来は「霞ケ関駅」と直結する。徒歩10分圏内に5駅12路線という利便性の高さだ。オフィス賃貸可能床面積は21フロアで約5万m2。2011年10月に開業の予定だが、4月までにテナントが内定し、満室稼働することを明らかにしている。

奥行き80cmのダブルスキン

 省エネに重要な役割を担うのが、奥行き80cmのダブルスキンだ。建物の外装をガラスで2重化したもので、空気の通り道になる。間に設置した電動ブラインドが日射を遮り、ダブルスキン内の暖まった空気が対流を生み、上から排出される仕組みだ。超高層の賃貸ビルで、これだけ奥行きのあるダブルスキンは珍しい。

飯野ビルディングの外観。窓部の奥行き感と、格子状のデザインが醸し出す端正さが特徴だ

ダブルスキンの機能(資料:飯野海運、竹中工務店)

 ダブルスキンには、外気を室内に取り入れる機能も持たせている。外気は執務室の奥まで流れ、建物のコアゾーンに設けた「エコボイド」と呼ぶ、ビルを縦方向に貫く煙突状の吹き抜け空間から排出する。エコボイドは、リフレッシュコーナーやエレベーターホールなどに自然光を取り入れる役割も担っている。

エコボイドからの自然光で明るいリフレッシュコーナー

エネルギー消費量が半分

 千代田区内幸町の一等地に建つこのビルは、眺望に恵まれている。通りを渡れば日比谷公園だ。南側には東京タワーが見える。建物の断熱性能を高めるには窓の面積を小さくする手もあるが、そうなると景色という財産が十分に生かせない。飯野ビルは建物の4面をダブルスキンで覆った。

 80cmの奥行きには、機能上の理由に加えて運用上の意味もある。この奥行きがあれば、中に入ってガラスの清掃作業ができる。奥行きが十分に確保できないダブルスキンの場合は、執務室からの作業となり、結果的にテナントのレイアウトに支障を与えてしまう。

奥行き80cmのダブルスキン

 環境性能の高さは数字にも表れている。ビル運用段階における1m2あたりの年間エネルギー消費量は932MJ(メガジュール)。このクラスのオフィスビルは1900MJが相場だ。東京都の公表資料に基づく編集部の調査では、テナントビルよりも省エネの取り組みが容易な自社使用の大規模オフィスビルが、ハード面とソフト面で相当の努力をして達成できる値が約1100MJだった。飯野ビルの目標が、どれほど難易度の高い値か、おわかりいただけるだろう。

テナントの電気代も安くなる

 ビルの環境計画書を細かく見ていくと、設備の省エネ効率を表すERR(イーアールアール)が53%となっている。東京都は35%以上を「特に優れた取り組み」と評価している。飯野ビルのERRは、この基準値を大きく上回る。データが公表されている200棟以上のビルのなかでトップ3に入る水準だ。

 特に照明の省エネ効果が大きい。オフィスフロアの照明約1万5000台をすべてLED照明にした。LED特有のぎらつきを感じさせない、自然光に近い照明装置だ。東芝ライテックが開発した製品を採用した。試算では、従来の蛍光灯に比べて消費エネルギーを47%削減できる。さらに、除湿機能を有するデシカント空調機の導入で、空調エネルギーを10%削減する。

 建物の耐震性は、100年間の使用を想定して通常の超高層ビルよりも25%ほど高くした。オフィスフロアのバルコニーに設備増設用のスペースを設けるなど、ニーズの変化に備える。事業主の飯野海運は、こうした100年仕様と環境配慮の設計によって、ライフサイクルコストが抑えられると見込んだ。テナントが負担する電気代は、一般のビルの約半分になると想定している。その分、一般のハイクラスオフィスビルに比べて建設費は高くなる。費用は公表していないが、上乗せ分は5~10%とみられる。

基準階の平面(資料:飯野海運、竹中工務店)

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<ビルの概要>
名称:飯野ビルディング(IINO BUILDING)
所在地:千代田区内幸町2-1-1(住居表示)
最寄り駅:地下鉄「霞ケ関駅」直結(2期工事完了時)
面積:土地8027.24m2、延べ床10万3852.46m2、賃貸可能床4万9455m2
構造:SRC、RC、S(制震)
階数(地上/地下):27/5
駐車場:約230台
事業主:飯野海運
設計・設計監理:竹中工務店
設計監修・工事監理:日建設計
施工:竹中工務店
運営:飯野海運、イイノ・ビルテック
工期:2009年3月~2011年6月(1期、オフィス、ホール、商業施設など)、~2014年11月(2期、商業施設、地下連絡通路、広場など)
総事業費:約460億円

PAL低減率:32.47%、ERR:53.37%
運用段階の1m2あたりエネルギー消費量:932.20MJ/m2・年
総緑化面積の敷地面積に対する割合:24.38%
CASBEE:Sランク(環境効率を示すBEE値は5.6)→認証取得予定
LEED:飯野海運の入居フロアで内装用のLEED-CIの取得を計画

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読者特価:29,400円(税込)
編集:日経不動産マーケット情報/ケンプラッツ
2011年7月21日発行

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菅 健彦日経不動産マーケット情報