建物の一生を考えた設計は簡単ではない。しかし、発注者は維持管理や運用にかかるコストにも目を向けている。ポイントとなるのが設備の取り扱い。中長期をにらんだ計画には建築技術者の知見が必要だ。(日経アーキテクチュア)

 発注者にとって長期スパンで建物にかかる費用は、計画の初期段階で知っておきたい情報だ。新築時にかかるコストも重要だが、それ以上に、どの時期に設備への再投資が必要となり、いつ更新しなければならないかといった情報は、経営戦略を立てるうえで必須の要素となる。

 そのためには、建物にかかる費用を時間軸で提示する必要がある。発注者は新築時だけではなく、運用段階でも建築技術者の知見を強く求めているのだ。

 一般に建物の一生にかかる費用(ライフサイクルコスト、LCC)は、建設時に必要な費用の5、6倍と言われている〔図1〕。建設費や土地の取得費、設計費といったイニシャルコストは、建物がある限り発生し続けるコストの一部にすぎない。

〔図1〕イニシャルコストはごく一部
土地・建物のイニシャルコストは、運営費や保全費などを含むライフサイクルコストのごく一部にすぎない(イラスト:ぽむ企画)

 計画段階でこうした費用を把握し、対策を意識して設計に盛り込むことで、後々のコストを大きく減らすことができる。いわゆるライフサイクルマネジメント(LCM)の考え方だ。