飛鳥山の併用軌道で下町から山手へ

 都電荒川線の沿線風景は、王子駅前を境に変わる。三ノ輪橋側は下町の平坦な土地で、緩やかなカーブと直線を組み合わせた軌道だ。一方の早稲田側は山手の起伏のある地形で、勾配と急カーブが連続する。荒川線のルーツである都電27系統(三ノ輪橋-赤羽)と、32系統(早稲田-荒川車庫前)の“面影”ともいえる。

 王子駅前と飛鳥山の間には、荒川線唯一の併用軌道がある。早稲田方面へ向かう電車は、JR東北線のガードをくぐり、飛鳥山公園を左に見ながら明治通りの66パーミルの急勾配を駆け上がる。左手車窓からは、その勾配よりもさらに厳しい上り坂を登るゴンドラが見えてくる。北区が管理・運営する飛鳥山公園モノレール(あすかパークレール)だ。

 庚申塚付近では、“昔ながらの都電の風景”が見られる。電車は線路ぎりぎりに建つ家屋をかすめ、“路地裏”を駆け抜ける。大塚駅前を過ぎると、再び急勾配と急カーブの続く軌道を走り、小台付近と同様に大改造が始まった区間へと入っていく。

飛鳥山公園(北区)と明治通りを見下ろす。王子駅前を出た早稲田行き電車が併用軌道区間の勾配を駆け上がる。写真中央は無人運転の飛鳥山公園モノレール。毎分30mの速度で上下し、標高差17.4mの区間を片道2分で結んでいる(写真:大野 雅人)

三ノ輪橋行き7000形電車が明治通りの併用軌道を行く。飛鳥山を出た三ノ輪橋行き電車は急坂を駆け下り、JR東北線のガード下を抜けて右折し王子駅前へ滑り込む(写真:大野 雅人)

片側4車線の明治通り右折レーンを行く7000形電車。併用軌道では、電車、タクシー、バスが連なるシーンが見られる(写真:大野 雅人)

新庚申塚で離合する7000形電車。交差する白山通り(国道17号)越しに見る。白山通りに遮断機はなく、電車は道路信号に従って走る(写真:大野 雅人)

神明都電車庫跡公園(文京区)には、都電で活躍した乙2号電動無蓋四輪貨車や6000形電車(6063)が保存してある(写真:大野 雅人)

あらかわ遊園の正門前には、前照灯が1カ所であることから「一球さん号」と呼ばれていた6000形電車(6152)が保存してある(写真:大野 雅人)

荒川車庫では入庫中の営業用車両に混じって6000形電車(写真手前、6086)や花100形(白い電車、元7500形)の姿も見える(写真:大野 雅人)

都電の保存車両は千葉県市川市などでも見られる。都営新宿線の換気塔が建つ大和田公園には、行き先表示を「荒川車庫」とした7000形(7011)が展示してある(写真:大野 雅人)