北王子支線――倉庫は売却

 JR貨物が第一種鉄道事業者として列車を運行する路線は非常に少ないものの、都内にこの7月まで存在した。山手・京浜東北線の田端駅に隣接する田端信号場駅から北に延び、北王子駅までの4.0kmを結んでいた北王子支線だ。

 1926年にレールが敷かれ、十條製紙(現・日本製紙)の十條工場専用鉄道としてにぎわった。日本製紙の北王子倉庫(北王子駅)と同社石巻工場(石巻港駅)、岩沼工場(岩沼駅)の間を結ぶ“紙列車”が走っていた。

 日本製紙が今年3月に貨物取り扱いを終了したことから、JR貨物もそれに合わせて列車の運行を取り止め7月に路線を廃止した。同地にあった日本製紙物流本社は埼玉県草加市に移転し、日本製紙が8月に北王子倉庫を売却した。土地面積は約4万3000m2で売却額は166億円、譲渡先は非公表だ。

 北王子支線跡地の今後についてJR貨物は未定としている。ほかにも専用線としての役目を終えて廃線となった路線は、都内にもいくつかある。臨海部に計約24km張り巡らされていた東京都港湾局専用線や、奥多摩の小河内ダム建設のためにつくられた約7kmの東京都水道局小河内線(水根貨物線)などが挙げられる。新ルートとして旅客線への活用が期待される貨物線に注目が集まる一方、こうした“眠った専用線”の行方も気になるところだ。

廃止前の北王子駅を見る。最も右の線路が貨物列車到着線(荷役ホーム)、左が出発線。構内には日通のマークが付いた入換機が休んでいた。春になると、出発線側の桜の花が満開となり、構内をピンク色に染める(写真:大野 雅人)

JR貨物が第一種鉄道事業者として施設を保有する路線は少ない。新潟の上沼垂信号場と東新潟港駅の間の信越線支線も、そんな数少ない“JR貨物の線路”だ。写真は北越紀州製紙新潟工場の荷物を積み、焼島駅(新潟市東区)を出発したコンテナ列車(写真:大野 雅人)

愛知の山王信号場と名古屋港駅の間の東海道線支線(名古屋港線)もJR貨物が第一種鉄道事業者として運行する路線。写真右手の線路が名古屋港駅の着発線。左手は東海旅客鉄道(JR東海)の名古屋資材センター。事業用車キヤ97系気動車の姿が見られる。同センターの西には名古屋市交通局名港工場が広がっている(写真:大野 雅人)

東京で稼動する専用線の一つ、横田基地専用線。米軍鶴見貯油施設(横浜市)から同基地へジェット燃料を運ぶ貨物列車が不定期で走っている。同基地から出てくる返空列車が鶴見線安善駅へ向かう(写真:大野 雅人)

越中島貨物駅を背にして東京都港湾局専用線の跡地を見る。「都有地 所有者 東京都財務局財産運用部」と記された看板が立っていた。写真奥の高架橋は首都高9号深川線(写真:大野 雅人)

小河内ダム(奥多摩湖)を建設する際に、東京都水道局が資材運搬用に敷いた東京都水道局小河内線(専用線)。奥多摩のトレッキングコースとして知られる「奥多摩むかし道」(旧青梅街道)を歩いていると、コンクリート橋梁や鉄製ガードレール、トンネルなどがそのまま残っていることが分かる(写真:大野 雅人)

北区王子付近を上空から見る。Aが日本製紙北王子倉庫で、右側に都市再生機構王子五丁目団地が建つ。Bは京浜東北線の東十条駅(下十条運転区)、Cは陸上自衛隊十条駐屯地、Dは埼京線十条駅。かつて北王子支線から須賀線と呼ばれる貨物線が分岐していた。東へカーブする道路が須賀線跡だ(資料:国土地理院)

北王子線(東北線支線)の位置と周辺の貨物列車が走るルート(赤線)。青の点線は旅客列車のみが走るルート。□はコンテナ取扱駅、△は信号場・操車場、●は車扱取扱駅(資料:JR貨物)