分速1.6mで水平移動

トラス橋撤去工事の概要。トラス橋を3m吊り上げた後、自走式の台車を取り付けて旧東横線渋谷駅方向に29.5m動かす。旧東横線の高架橋は大部分が既に解体されたものの、トラス橋の撤去に必要となる約50mの区間だけは残してあった(資料:JR東日本)

 まず、トラス橋の両側にベントと呼ぶ仮支柱を地上から立ち上げた後、鋼製の工事桁をトラス橋に沿ってJR山手線の上空に架け渡す。

 次に、トラス橋を支承から切り離し、工事桁上に設けたジャッキなどの吊り上げ設備を使って3mほど持ち上げる。その後、トラス橋の旧東横線渋谷駅側の下に自走式の台車を挿入して、トラス橋の重量を受け替える。反対の代官山駅側は、工事桁上の吊り上げ設備が台車の役割も兼ねる。この時点でトラス橋の4隅のうち、渋谷駅側の2隅は下から台車に支えられた状態、代官山駅側の2隅は工事桁上の台車から吊り下げられた状態となる。

 10月5日未明に実施したのは、トラス橋の引き出し作業だ。電動モーターで駆動する台車を使ってトラス橋を旧東横線渋谷駅方向に29.5m動かす。トラス橋がJRの線路上空から姿を消し、旧東横線の高架橋の上に丸ごと移動するかたちとなる。

 トラス橋の移動速度は分速1.6m。わずか20分ほどで引き出し作業は完了する。実際の工事では、トラス橋は5日午前2時10分ごろに動き始め、同30分ごろまでに所定の位置へ到達。予定通りに作業を終えた。

工事は、前後の区間を全て赤信号にして列車の進入を禁じる「線路閉鎖」と、架線の電流を止める「き電停止」の手続きをしてから始める。写真は、作業員が架線にポールを当てて、電流が本当に遮断されているかどうかを確かめているところ(写真:ケンプラッツ)

移動開始直前のトラス橋。北側から撮影(写真:ケンプラッツ)

トラス橋の移動に先立ち、耐震や耐風のために仮固定していた設備を外す(写真:ケンプラッツ)


「それでは開始します」の掛け声でトラス橋がゆっくりと動き始める。移動中は工事桁のたわみが規定値内に収まっているかどうかなどが無線で刻々と伝えられる(動画:ケンプラッツ)

半分ほど移動したトラス橋。このとき工事桁上の台車がスパンの中央付近に来るので、工事桁は最も大きくたわむ(写真:ケンプラッツ)

29.5mの水平移動を完了したトラス橋。今後、トラス橋を高架橋上で解体するほか、工事桁などもクレーンで撤去する(写真:ケンプラッツ)

 その後、トラス橋の代官山駅側の下にも台車を挿入して、渋谷駅方向にさらに8m引き出す。最後に、高架橋の上でトラス橋の部材を切断した後、クレーンを使って撤去する。工事桁やベントも同様に、クレーンなどを使って解体、撤去する。