窓の厚みを“復権”させる

――建材メーカーのお立場からはいかがでしょうか。

阿見 メーカーとして、全てを包含できる窓をつくろうとしているのは確かです。あらゆる事態に対応する、という考え方が基本になっています。また、風の力を使って自然換気をコントロールする「スウィンドウ」という窓など、様々な状況に対応できる製品の開発にも努めてきました。

ベイシアビジネスセンター/群馬県前橋市、2006年完成、設計:日建設計。三協アルミの自然換気窓システム「スウィンドウ」を採用している(写真:三協アルミ)

 今お話があったフィックスの窓と換気用の窓を使い分けるような考え方にも、できるだけ対応していく必要があると思っています。お客様がどのような条件の下で製品を使っているのかをより的確に把握し、ものづくりに反映させていく努力が、これまで以上に求められていると感じます。

田辺 千葉さんが設計を手掛けた住宅の「Studio御殿山」では、壁際に配置した家具の中に窓をうまく収めていますよね。厚みのある窓や、その見え方がとても面白いと思います。

Studio御殿山/東京都品川区、 2006年完成、設計:千葉学建築計画事務所。窓は、壁側の収納をくりぬいたような格好になっている。このため、外部から死角になる部分が多い。住宅密集地に建つことを考慮したものだ。(写真:西川公朗)

四方にステンレス鏡面材を張った万華鏡のような窓もある(写真:西川公朗)

千葉 そこが、もう1つの興味なんです。日本の建築の窓はかつて、複数の建具が重なり合うものでしたが、それらの機能を1つに集約していく中で、どんどん厚みのないものになっていきました。そこで、Studio御殿山では窓の厚みを“復権”させてみたわけです。

 窓に奥行きがあって、ちょっと脇にそれれば、見込み(奥行き方向の幅)があるので外からは死角になります。正面に立てば、ちゃんと見える。窓が開いているか閉じているかという二者択一ではなく、見込みを利用して家の中に自分なりの居場所を見付けることができるわけです。

田辺 断熱の技術などが進化し、窓はどんどん薄くなっていますよね。けれども、そうではない方向性もあるということですね。

 一方、窓の「厚み」というのはスペース効率に関係してきます。例えばダブルスキンやエアフローウインドウのビルの場合、床面積の算出ラインが窓の内側になるか外側になるかで延べ面積が変わります。環境性能に優れたファサードなのだから、内側を外壁ラインと定めることができるようにすれば採用しやすくなるはずです。同時に、ファサードの厚みを利用した建築上の工夫がもっとできるようになると思います。