窓の機能をばらして組み直す

千葉学(ちば・まなぶ)/1960年東京都生まれ。87年東京大学大学院工学系研究科修了後、日本設計などを経て、2001年に現事務所設立。同年東京大学大学院工学系研究科准教授、13年より現職。日本盲導犬総合センター、大多喜町役場、工学院大学八王子キャンパス総合教育棟などを手掛ける(写真:中村宏)

――千葉さんから、実際のプロジェクトではどのような工夫をされているのかお話しいただけますか。

千葉 どんな敷地でも、例えば素晴らしい風景を見せたいと思う方角と風を通したいと思う方角は必ずしも一致しません。逆に、騒音の聞こえる方角と景色のいい方角が一致してしまう場合もあります。それらを踏まえると、窓がつかさどるいろいろな要素に1つのタイプの窓で対応する必要はないと思うのです。

 あるプロジェクト以降、それを意識するようになって、外を見せるためには本当にきれいなフィックス窓をつくろう、風を通すためには風の道のために最もいい位置に窓を設けようといった姿勢で臨むようになりました。風を通すだけの窓であれば必ずしも外が見えなくても構わないという考え方です。

 最近のプロジェクトには工学院大学八王子キャンパスの総合教育棟があります。大学はどういう場所かという視点から、様々な集団が交流したり互いの活動を体感したりできるように、全ての教室がパサージュという非常に狭い路地ぐらいの空間を介して相対しているような建物をつくりました。

 そこでも窓のもつ意味を改めて問い直し、互いに見合っている関係が大事だと思う場所にはフィックス窓、換気のために一番いいと思う教室の上部には換気用の窓などと使い分けました。窓の機能をいったん解体し、それらをもう一度組み立て直した例です。

工学院大学八王子キャンパス総合教育棟/東京都八王子市、2012年完成、設計:千葉学建築計画事務所。教室・研究室のほか、学習支援センター、情報カフェテリア、大学事務機能などを集約。さらにラウンジ、広場などのオープンスペースを確保している。これらの場所に集う学生の活動をどう関係づけるかが開口部の設計に反映されている(写真:西川公朗)

――田辺さんは今のお話を聞いて、どうお感じになりますか。

田辺 自然換気で一番怖いのは、実は外気が入り過ぎる時なのです。外気が入り過ぎないようにする工夫が必要だということは、よくお話ししています。それから建築を設計する方はたぶん、一番いい季節を想像して窓を考えていると思います。それに対し、私たち建築環境の専門家は、一番寒い日などを想定します。意匠設計と設備設計の間にはそうしたギャップが生じ得るのですが、眺望用のフィックスの窓と換気用の窓といったように機能を切り分けるという今の千葉さんのお話は、とても示唆に富むものだと思います。