ゆげ・まさよし 1960年東京都生まれ。84年武蔵工業大学大学院修士課程修了後、森ビルに入社。2006年より現職。赤坂ツインタワー新館、六本木ヒルズ、上海環球金融中心などの設計・監理を担当。以後、元麻布ヒルズ、平河町森タワー、アークヒルズ仙石山森タワー、虎ノ門ヒルズの設計責任者を務める(写真:中村宏)

 オフィスか住宅かに限らず、「開口部を広く取って、明るい空間にしたい」というユーザー側の要望は強い。オフィスで言えば、高層ビルの外装がPCパネルにサッシを打ち込むポツ窓形式だった頃から、窓を大きくしたいという要望はあった。アルミカーテンウオールが主流になってからも断熱性能や室内環境との兼ね合いで、以前はあまり広げることはできなかった。

 複層ガラスやLow-Eガラスを用いる高性能のサッシが登場してから状況が変わり、ガラス面積の大きいビルが増え始めた。ただ、私自身は、デザインが似たものになりやすいという点から、この動きには少し抵抗を感じていた。

 竣工写真で見れば全面ガラスのビルはきれいかもしれないが、実際に人が働き始めると雑然としたオフィス内が足元まで見えることになる。「生きているビル」として、本当によいのかには疑問が残る。そんな考え方もあって、森ビルが開発に携わっている大規模オフィスには、床から天井までのフルハイトサッシの採用事例はまだない。

 また森ビルでは30年来、窓際で単独に運転させることができるウオールスルー空調を原則として採用してきた。窓部にペリカバーを設けるため、必然的にフルハイトにはできないという事情もあった。営業する側からすればセールスポイントになるものであっても、技術面と街並みの観点から簡単にはゴーサインを出しにくいデザインだったのだ。

 フルハイトが求められるのは、オフィスビルのフロアプレートを大きく取るようになってきたことも関係する。窓側からの奥行きが深くなるので、窓を上下に高く取り、内側にいる人にも屋外の明るさなどを感じ取ってもらえるようにしたほうが好まれる。そうした潮流をにらみ、当社でもフルハイトサッシの採用を検討する事例が現れている。これにより、フルハイトにする代わりに付けたい庇やフィンの素材、ディテール、ガラス面の清掃や交換との兼ね合いなどが解決しなければならない課題になってくる。