国、全国自治体などからの関心が高まる「リノベーションまちづくり」。その発信地である北九州市・小倉の現場からリポートする。(前編) ※後編はこちらの記事です。

北九州発のまちづくりの「発明」 その成果に、国・自治体が着目

 6年で投資回収──と“受講者”が事業プランを示すと、その場で「3年、いや1年で回収する計画を組んでほしい」といった講評が飛んでくる。空間のデザインやプランニングと同時に、収支計画や利回りの説明にも時間を割き、その目の前の席には、対象となる空き物件の提供を申し出た不動産オーナーたちも座る。「スクール」と称する4日間の集中講座の最終日、各受講者チームによる公開プレゼンテーションの光景だ。

 北九州市の小倉を発信地とするリノベーションスクールの取り組みが着実に成果を上げ、今、全国の自治体、国からの注目を浴びている。

2014年8月、第7回「リノベーションスクール@北九州」における公開プレゼンテーションの様子(写真:日経アーキテクチュア)

 スクールといっても、全国から集まった受講者に単に学んで帰ってもらうわけではない。採算性のある実案件を期間中に企画し、遊休不動産の再生を期待している地元のオーナーを頷かせなければならない。複数の受講者チームそれぞれに別に出ている課題は、いずれも具体的な実現あるいはその検討を前提とする場所のリノベーションなのだ。

 建築家の嶋田洋平氏は、まちづくり会社である「北九州家守舎」の代表取締役として主催側に回っている。スクールの特色をこう説明する。

 「まず不動産オーナーが集まる場である。そして、そのオーナーが持っている遊休不動産をうまく使ってリノベーションプロジェクトを実現し、リスクを取って事業として回していく人たち、すなわち“家守”(後述)を育てる場でもある。そこにテナントとして入るビジネスオーナーを含め、あらゆる人たちが集まる場として用意されている」。

 北九州市では2011年から半年に1回、今年8月で全7回を開催している。その過程で、「ある意志を持ってエリアをプロデュースし、マネジメントしていくことが、まちにとっては重要になる。特に不動産オーナーたちをどうやって束ねるかがカギになると分かってきた」(嶋田氏)。

 受講生を指導する「ユニットマスター」などの立場で参画してきた建築家の馬場正尊氏は、「都市計画の方法論を見直さないといけない時期に来ている。色々なアプローチがあり得るとは思うが、そのうちの1つがスクールをエンジンにした、この方法ではないか。3回目ぐらいに、はっきりそう意識した。参画しているみんなが、同様に感じたのではないか」と手応えを語る。

 6回目までに持ち寄られた遊休案件が32件、うち実事業化に至ったものが11件、計画中あるいは事業準備中のものが13件に上る(14年8月現在)。関連プロジェクトも含め、「実事業化した場所における新たな起業などによる雇用創出は約300人に上る。エリア内の通行量も3割程度増加するなど、にぎわいの創出効果も現れている」(北九州市産業経済局新成長戦略推進室サービス産業政策課の片山二郎氏)。

魚町銀天街に面する中屋ビルの1階に14年7月オープンの商業空間「ビッコロ三番街」(写真:イクマサトシ)

14年7月オープンのシェアハウス「Coclass」(写真:イクマサトシ)

 こうした成果を知り、また“卒業生”が全国に散る中で、当初から関与していた北九州市以外の自治体がスクールを誘致する動きが目立つ。さらに今年度は、スクール運営に対して国土交通省「民間まちづくり活動促進事業」の補助が下り、活動を各地に水平展開する使命を、より強く帯びるまでに至っている。