増築前提の建物だったことが奏功

左2点が1階、右2点が4階の改修前と改修後。1階の案内所は市役所と観光、百貨店の案内所を兼ねる。右手のエスカレーターが市役所のフロアに上がる動線となる(改修前の写真:AIS総合設計/1階改修後の写真:加藤光男/4階改修後の写真:エネックス写真事務所)

 市は、改修についての設計業務を、調査と設計の2件に分けて発注している。いずれも、宇都宮市内に本社のあるAIS総合設計(受注時の社名は荒井設計、9月に社名変更)が受注した。

 外装は特に手を加えずに、洗浄するなどして活用する。一方の内装は、すべて撤去してリニューアルする、というのが市の基本方針だった。建設から約20年。設備機器は更新の時期でもあった。「調査業務では、エスカレーターやエレベーター、空調設備のほか、建具やシャッター、さらにクレセントに不具合がないかどうかまで詳細に調べた」とAIS総合設計の佐々木宏幸社長は話す。耐震診断も実施した。建設当初から増床を予定して設計したビルだったことも手伝い、結果は現行の基準をクリアしていた。ただし、塔屋部分は耐震性能が不足していたため、耐震壁を設置するなどの耐震改修工事を実施した。

 改修で最も課題になったのが、開口部と照明だった。元が商業施設のため、窓が少ない。庁舎はオフィスなので、普通であれば周囲には窓が巡る。明るさが不足する以外に、「例えば土木部門であれば、雨が降り始めたら緊急対応を想定して行動しなければならない。窓から外の天候が見えることが望ましい」と國保室長は語る。

 打開策として設計者が着目したのが、商業施設からオフィスに転用することによって不要になる外部の避難階段だった。これを撤去し、そこに開口部を設けて内部に自然光を取り入れるようにした。フロアの中心にあるエスカレーターに隣接したボイドも光を取り入れるために活用した。

 もう1つの課題が議場だ。柱のない広い空間とするほか、議席の背後には一段上がった傍聴席も設けるので相応の高さが必要になる。そこで高さを確保するために、屋上である4階の天井を撤去し、屋上部分に屋根を兼ねた小屋を新たに設置した。内部では、3本の柱を撤去して無柱空間とした。これも、建設当時から2層の増築を想定していたのに加えて上層階がなかったので可能になった。

 2階以上の庁舎部分は、間仕切りのないオープンフロアとし、広い通路を挟んで各部署を配置している。廊下を挟んで各部署の部屋がある従来の庁舎建築とは異なる。商業施設から転用するに際し、設計の作業量は、新築と比較して1.5倍程度になったという。「業務の連携や職員数などを考えながら、どこにどの部署を配置するか。設計は、まるでパズルのような作業だった」と佐々木社長は振り返る。

百貨店だったので中央にエスカレーターがあり、吹き抜けになっていた。これを活用して開放的な空間構成にしている(写真:エネックス写真事務所)

南北断面図。当初から増築を想定した建物だったため、中央上部の議場部分で柱を撤去することができた

●栃木市役所本庁舎(改修工事)

  • 栃木県栃木市万町9-25
  • 地域・地区:商業地域、準防火地域
  • 用途:2~4階 市庁舎、1階 百貨店(改修前:百貨店)
  • 耐震改修工事:有
  • 確認申請:無(建築基準法12条5項による報告有)
  • 既存建物の図面:有
  • 検査済証:有
  • 構造・階数:SRC造、地上4階・塔屋2階。駐車場=RC造、地上7階
  • 対象面積(延べ):2万3538.34m2。駐車場=1万6283.31m2
  • 竣工:2014年3月(既存建物:1990年)
  • 発注:栃木市
  • 設計:荒井設計
  • 施工:舘野・牧田JVほか
出典:2014 Autumn 特別編集版 47~49 Vol.029 価値を高めるリノベ・改修・維持管理
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