中心市街地の商業施設だったビルに市役所が移転し、1階に百貨店を誘致した。旧庁舎が建て替えを検討していたこと、百貨店も同地域に進出したいと希望していたことなど事情が合致し、テナント撤退後のビル再生が実現した。

 栃木市は、栃木県南部の蔵のまちとして観光名所にもなっている。市庁舎に再利用されることになったビルは、JRと東武鉄道が乗り入れる栃木駅から歩いて15分程のメインストリートに面して建ち、観光客も散策をする場所の中にある。SRC造、地上4階・塔屋2階で、延べ面積2万3319m2のビルは、県内に商業施設を展開する福田屋が1990年に建設したものだった。

 同ビルは旧来は市内で唯一の百貨店で、生鮮食料品を中心とする1階の売り場は盛況を続けたが、2階以上の売り場は客足が途絶えるようになっていた。福田屋は2010年に閉店を決定し、同年12月に市に対して店舗だったビルの無償提供を申し入れた。土地と、本館の背後にある7階建ての立体駐車場は有償という内容だった。

中心市街地の活性化を目指し、1階には百貨店を再誘致

 これを受けて市は、11年1月に対策検討委員会を設置して対応を協議した。2月には福田屋が閉店して中心市街地の人通りは明らかに減少。市が実施した住民説明会で、「中心市街地の衰退は防いでほしい」「生鮮食料品の販売だけでも復活してもらいたい」といった要望があった。

 一方、当時の市庁舎では、「建築から50年以上を経過して耐震性能が現行の基準を満たしていないほか、2度にわたる町村合併で職員が増加して手狭になっていた。庁舎機能が複数の建物に分散し、市民サービスに支障を来たしているのが実情だった」と栃木市総合政策部まちなか土地利用推進室の國保能克室長は説明する。

 検討委員会は、庁舎を建て替える場合と、福田屋から無償譲渡を受けて改修して使用する場合の費用を試算した。新たに庁舎を建設すると、土地代を除いて建設費だけで約65億円かかる。一方、改修費の試算は約21億円だった。最終的には約29億円を要したが、それでも新築する場合の半分以下。土地代などを含めた事業費の総額は約50億円だった。

北西側の外観。手前が栃木市の中心市街地のメインストリート。商業施設跡に市役所機能を移転させるに際し、石巻市の事例などを参考にしている(写真:エネックス写真事務所)

 面積についても既存の庁舎は延べ6500m2しかなかった。職員の増加によって延べ1万8000m2は必要との試算に対し、福田屋のビルは2万3000m2ある。市民の要望に対応し、1階部分の4100m2を生鮮食品を中心とする店舗に割り当てても面積的に余裕はある。

 これらから判断し、12年3月に検討委員会は「福田屋の栃木店は市庁舎として利活用することが望ましい」と答申し、再利用が決まった。これを受けて市では、予算措置や改修についての具体的な検討を進めると同時に、1階部分の商業施設のテナントを公募した。

 3社の応募の中から進出が決まったのが東武百貨店だった。栃木市内には1988年にギフトショップを開設していた東武は、県南部の商圏を対象にして規模を拡大したいと考えていた。

 「手続きなどのために市役所を訪れる市民が1日に約1500人、職員も700人いる。中心市街地の活性化にも貢献できると考えて出店を決意した」と当初からの担当者である東武宇都宮百貨店栃木店の鈴木一志店長は話す。もともと商業施設だったのと、特に外装は百貨店らしい石張りで風格もあるため、出店を決意しやすい条件でもあった。

外装は洗浄によって新築同様にすることができた。蔵のまちとして観光名所にもなっているため、前面道路は休日には観光客でにぎわう(写真:エネックス写真事務所)
市庁舎の2階部分。住民票など市民対応の窓口がある(写真:加藤光男)
4階の議場。柱を撤去し、さらに天井も抜いて広さと高さを確保した(写真:エネックス写真事務所)