モーターだけで静かに走れる電気自動車やハイブリッド車に、エンジンのような音を出す装置を取り付けよ――。国土交通省は1月29日、メーカー向けにガイドラインをまとめた。

 走行時に二酸化炭素を出さず、走行音も静かなのが電気自動車の売り。ところが、視覚障害者団体などから、静かすぎて歩行者が車の接近に気付かずに危険だという声が上がっていた。ガイドラインはこうした声をくみ取った。

 ガイドラインでは、電気自動車などがエンジンを使わずに時速20km以下で走る場合、「車両の走行状態を想起させる連続音」をスピーカーから出すよう定めた。サイレン音や動物の鳴き声、波や風といった自然現象の音は認めない。生活の中で違和感があったり、ドライバーが音を出すことに気恥ずかしさを感じたりするからだ。

自動車の走行速度と音量の比較。図中の「一般車」はエンジンで走る車。「ハイブリッド車」はエンジンを使わずにモーターだけで走る場合。時速20km以下では、「ハイブリッド車」の方が最大20デシベルほど静かだ(資料:国土交通省)

 装置の取り付けは今のところ任意。しかし、国交省の「ハイブリッド車等の静音性に関する対策検討委員会」(委員長:東京大学高齢社会総合研究機構の鎌田実教授)は、可能な限り早期に義務付けるよう求めている。

 同様の問題は、建築分野でも起こり得る。例えば、建物のエントランスホールの外周などに設けたフルハイトのガラス面。床から天井までをガラス張りにして、ガラスの売りである透明感や開放感を生かす。

 ところが、こうしたガラスに人が衝突する事故は後を断たない。特にガラスの先の空間が手前よりも明るかったり、床の仕上げ材が連続していたりすると、ガラスの存在に気付きにくくなる。

 衝突を防ぐ対策として、ガラスに衝突防止マークを張って目立たせる方法や、ガラスの手前に鉢植えや傘立てを置いて近付けないようにする方法などがある。しかし、あまりにも過剰な対策は、ガラスの良さを損ねてしまう。

 歩行者や利用者の安全は第一に考えなければならない。その際、設計者には技術や素材の利点を生かしつつ、さりげなくとも確実な対策が求められる。電気自動車が今後、どのような音を出しながら走るのかに注目したい。ガラスまわりの対策と同じく、設計者のセンスが問われるからだ。

あるオフィスビルのエントランス。ガラスへの衝突を防ぐために、黄色いプラスチック製のチェーンを垂らしている(写真:日経アーキテクチュア)