東京駅経由の急行線構想が具体化へ

 成田・羽田の両空港と都心とのアクセスは、着実に改良されている。となると残るは、都心部分をいかに速く通過できるかが、空港間連絡をスムーズにする鍵となる。

 成田新高速鉄道プロジェクトと並んで大きく期待されているのが、都心での急行線の建設だ。国土交通省は両空港の機能強化策を検討しており、そのために設けた懇談会のワーキンググループ(座長:山内弘隆・一橋大学商学部長)が、鉄道整備について検討を重ねている。2009年5月に公開した案では、都心-成田空港第2ビルを30分台、都心-羽田空港を20分台、両空港間を50分台で結ぶことを目標に、都営浅草線を短絡する別線を建設するよう提唱している。

「首都圏空港における国際航空機能拡充プランの具体化方策についての懇談会」に設置された「成田・羽田両空港間及び都心と両空港間との鉄道アクセス改善に係るワーキンググループ」(座長:山内弘隆・一橋大学商学部長)がとりまとめ2009年5月15日に公表したルート案。4案のうち押上-泉岳寺を短絡し、東京駅を経由する「案2」を選定した (資料:国土交通省)

 都営浅草線を空港へのアクセス手段とみた場合、大きく2つの課題が浮き彫りになる。

 1つは、線内で追い越しができないことだ。都心部を走ることから運行密度が高く、急行運転しようとしても先行する普通列車にすぐ追いついてしまう。現在、6駅を通過する「エアポート快特」を走らせているものの、普通列車より4分ほど速いにとどまっている。都市鉄道は1駅の通過で1分速くなるので改善の余地がある。

 もう1つは、多数の利用者が見込める東京駅西側の大手町・丸の内・有楽町(大丸有地区)から離れていることだ。大丸有地区は東京のビジネス街の中でも特に集積が進んでいる。都営浅草線は東側に500m以上離れて走っている。

東京駅を重要視、途中駅は設けず

 ワーキンググループの案によると、京成、京急と都営浅草線の境界である押上、泉岳寺の両駅間11kmを直線的に結び、中間駅は東京駅のみを設ける。新線は空港間連絡に特化しない。都心と両空港や京成・京急沿線との移動、都心内での移動、新幹線からの乗り換えなどにも配慮する。利便性を高めることで採算ラインに乗せることを目指す。そのために東京駅を経由することを重要視した。東京駅の位置や構造についても、整備効果や費用便益比が高くなるよう検討すべきとの考えを示している。

 東京駅付近のルートについては西から順に、(1)丸の内仲通りの直下、(2)東京メトロ丸ノ内線の直下、(3)八重洲通りの直下――の3案を示している。ちなみに、現在、秋葉原止まりになっている「つくばエクスプレス」を東京駅に延伸する構想でも、丸の内仲通り直下への建設が想定されている。

 需要が最も期待できるのは丸ノ内線直下ルート、最も小さいのは八重洲通り直下ルートとしている。ただし、丸の内仲通り直下ルートについては、地下鉄などへの乗り換え通路を斜めに設置するなどして利便性を高くすれば、丸ノ内線直下ルートよりも需要が大きくなると付け加えている。

東京駅付近のルートとして挙げた3案。利用が最も期待されるのは丸ノ内線直下案だ。ただし、丸の内仲通り直下案でも乗り換えを便利にすれば、丸ノ内線直下案より利用客を集められる (資料:国土交通省)

 注意すべき点も挙げている。都営浅草線は現状で1時間当たり最大24本の列車が走っている。仮に、このうち8本を新線経由に切り替えると、都営浅草線の本数は16本に減少する。京成、京急の信号設備や駅を改良して、輸送力を高める必要があると指摘している。

短絡線を整備するに当たっての注意点。既存線の本数が減って不便にならないよう、短絡線の両側で輸送力の増強が必要だ。A駅、B駅は押上と泉岳寺 (資料:国土交通省)

 事業費については、今後の検討課題だ。近年の地下鉄工事では、1km当たりの建設費が200億~250億円程度に収まっている。中間駅を1カ所しか設けないのであれば、おおむね2500億円以内になりそうだ。