降ってわいたように出てきた成田・羽田リニア構想。首都圏の代表的な2つの国際空港を浮上式の超高速鉄道車両「リニアモーターカー」で結び、15分で移動できるようにするという壮大な構想だ。政治家が有権者に実現を訴えるなど、話が盛り上がっている。

 一方、空港にアクセスする既存の鉄道路線は、改良が着々と進んでいる。2010年度には成田高速鉄道アクセス線が完成し、都心と成田空港が最短36分と現状より15分速くなる。さらに、都心に地下急行線を建設して両空港を50分台で結ぶ構想も、具体化に踏み出している。

 成田・羽田の空港間連絡鉄道は、リニア新線にすべきか既存路線の改良が良いのか、現状と数年後を踏まえて検証する。

政府の「アジア・ゲートウェイ構想」で気運が上昇

 成田・羽田リニア構想について神奈川県は4月14日、「成田~羽田超高速鉄道整備構想 検討調査報告書」を公開した。この構想によると、リニアモーターカーが成田空港から千葉市と東京湾臨海部を経由して羽田空港に至る80kmを、平均時速300kmで走行する。

 リニアモーターカーによる空港アクセスは、既に中国の上海で運行例がある。上海リニアは路線長が30kmで平均時速は約260kmだ。成田・羽田リニアは路線長が50km長く高速走行に向くことから、平均時速を約300kmと想定した。横浜、新宿、さいたま新都心などへ延伸するなど、交通ネットワークを強化する必要性も訴えている。

 事業費については、成田空港から横浜までの約90kmに6駅を設け、車両を120両用意した場合、1兆3000億円になると試算した。1km当たりでは143億円だ。運営費は年間1200億円とみている。

神奈川県が2009年4月14日に公開した「成田~羽田超高速鉄道整備構想 検討調査報告書」で示した成田・羽田リニアのルート。成田空港から羽田空港に至る80kmを平均時速約300km、所要時間15分で走行する。横浜、新宿、さいたま新都心などへの延伸も視野に入れている (資料:神奈川県)

 なぜ両空港を短時間で結ぶ必要があるのか。それは、両空港を一体として運用できるよう有機的につなぎ、2つの航空路線を乗り継ぎやすくするためだ。両空港間を鉄道で移動する場合、現状では1時間30分から2時間ほどかかる。決して便利とは言えず、成田開港以来、改善が求められている。

 リニア構想の気運が高まったきっかけの一つが、政府が2007年5月にとりまとめた「アジア・ゲートウェイ構想」だ。魅力的な国づくりのために必要な政策の一つとして、両空港のあり方について触れている。2010年以降、国際線の発着枠数が成田は年2万回、羽田は年3万回増えることを挙げたうえで、「両空港のアクセス改善を図りつつ一体的に活用する」との方針を明記した。

 背景には、近隣諸国に乗り継ぎの便利なハブ空港が整備されつつある現状がある。例えば、日本の地方空港からは韓国の仁川(インチョン)国際空港への便が就航している。ヨーロッパなどに出かける場合、羽田・成田を経由せず、まず仁川に飛びそこから目的地に向かうと、乗り換え回数が少なくてすむ。成田・羽田リニア構想は、奪われつつある空の覇権を取り戻す切り札として期待されている。