都市整備の対象面積は都心の10分の1以下

 次に、都市整備の面から品川駅周辺をみてみる。

 品川駅周辺は元々静かな場所だった。国鉄改革などで放出された土地に、超高層ビルが建ち並び、この15年で街の雰囲気が様変わりした。これから先、どのように発展するのか、東京駅周辺のようなビジネス街に成長する余地はあるのか――。

 この地区の整備方針については、東京都都市整備局がまとめた方針「新しい都市づくりのための都市開発諸制度活用方針」から、位置づけを読み取ることができる。都は整備する各地区を「都心部」「副都心」などと区分している。品川は秋葉原とともに「新拠点」と定義されており、都心部や副都心よりも小振りの位置付けになっている。品川も秋葉原も、既成市街地の規模や公共交通の集積度合いが副都心ほどではないので、新たな区分とした。

 品川新拠点は、文化・交流や商業などの育成を促進する29ヘクタールの「業務商業市街地ゾーン」と、育成促進対象に住宅も加えた192ヘクタールの「複合市街地ゾーン」から成る。合計すると200ヘクタールを超え、都市整備の規模としては、決して小さくはない。

 品川駅の北側には、JR東日本が約20ヘクタールの車両基地(田町車両センター)を所有しており、うち半分を再開発する予定になっている。商業ビルなどを建設するほか、山手線と京浜東北線に新駅を設置する方針だ。巷では泉岳寺駅と呼ばれている。都内でも大型のプロジェクトとなる。

 ちなみに、田町の車両基地を縮小させるために、車両の配属を北区の車両基地(尾久車両センター)などへ移す。車両を容易に移動させたり効率的に運用させたりするために、東京-上野間に路線(東北縦貫線)を建設中だ。完成後は東海道線と東北・高崎線が直通運転を行う。

 このほか、東京都が2007年11月に「品川駅・田町駅周辺まちづくりガイドライン」をとりまとめ、開発を誘導している。

 それでも、都心部と比べれば、規模の差は歴然としている。東京駅周辺の業務商業市街地ゾーンは544ヘクタール、数キロメートル圏内の複合市街地ゾーンは2022ヘクタールにも及び、品川新拠点より1桁大きい。

 都心部では、既存ビルの建て替えが絶え間なく続いており、集積の度合いも増している。対して品川新拠点の再開発は、車両基地再開発を除けば、98年に品川インターシティ、03年に品川グランドコモンズが完成して一服感がある。

都市整備の比較:都心部と品川新拠点
地区 面積(ha) 町名など
東京駅周辺 更新都心(業務商業市街地ゾーン) 304 大手町、丸の内、有楽町、内幸町、霞が関など
再編都心(業務商業市街地ゾーン) 240 日本橋、八重洲、京橋、銀座、新橋など
都心周辺部(複合市街地ゾーン) 2,022 御茶ノ水、神田、湊、築地、勝どき、晴海、赤坂、六本木、田町、芝浦など
品川駅周辺 品川新拠点(業務商業市街地ゾーン) 29 港南の一部
品川新拠点(複合市街地ゾーン) 192 港南、高輪、天王洲など
施策の及ぶ面積を比較すると、都心部は品川新拠点より1桁大きい (東京都の資料を基にケンプラッツが作成)
都心部の範囲
東京都が定義した都心部の範囲 (資料:東京都都市整備局「新しい都市づくりのための都市開発諸制度活用方針」から)
品川新拠点の範囲
東京都が定義した品川新拠点の範囲 (資料:東京都都市整備局「新しい都市づくりのための都市開発諸制度活用方針」から)

 鉄道の便では、品川駅は東京駅よりも不便である点は否めない。JRと私鉄によるネットワークは充実しているものの、地下鉄は1線も通っていない。東京駅周辺で地下鉄が網目のように整備されているのとは対象的だ。品川新拠点は現状、駅が1点に集中しており、面としてのまちの発展が期待しにくいのだ。

 もちろん、リニア新幹線の品川駅建設が正式に決定すれば、新たな都市整備計画が策定されるだろう。品川駅にアクセスするための公共交通網も整備されると思われる。ただし、それでも品川新拠点を都心部と肩を並べるビジネス街に変貌(へんぼう)させることは容易ではない。