3Dで超高速設計! グーグル発ベンチャーのBIM

米グーグル発の独立ベンチャー企業、Fluxは従来の常識を変える斬新な建築設計手法を開発中だ。敷地に建物の“種”となるデータを置き、広さや高さなどを調整しながら設計を進める3Dモデル作成システムと、建築関係の法規制を都市の3Dモデルと連動させて、クリック1つで建築可能な3D空間を表示するシステムを開発していることが明らかになった。いずれも、現在のBIM(ビルディング・インフォメーション・モデル)を超えた“ウルトラBIM”ともいえるシステムだ。

 米グーグルが「現在の半分のコスト、半分の工期」で建物を作る画期的な建設手法を開発していることは、当コラムの2013年11月6日付けの記事でもお伝えした。米グーグルは「Google X」という技術開発部門があり、そこで新しい建設手法のプロトタイプを開発したのだ。

 このプロトタイプは、デラウェア州に設立されたバネバー・テクノロジー(Vannevar Technology Inc.)に引き次がれた。同社はGoogle Venturesを含む複数の投資会社から出資を受け、サンフランシスコに居を構えるFlux(Flux Factory, Inc.)というグーグルから独立した企業となって、2015年の事業開始に向けて開発が続けられている。

 BIMによる建築設計は、従来の2次元CADに比べてかなり自動化が進んでいるとはいうものの、設計者が1つひとつの建物を設計していくことに変わりはない。しかし、Fluxは、ある程度、規格化された建物を、現場の条件に合わせて驚異的なスピードで設計することを目指している。

Fluxが開発中の3D設計システム(資料:flux.io)

“種”から建物の3Dモデルをスピード作成

 Fluxが開発している設計技術の1つは、建物の意匠、構造、設備の要素データを含んだ建物の“種(seeds)”のようなものから建物の3Dモデルを作り出す仕組みだ。

 この“種”をパソコン上の敷地に配置するとスタンダードサイズの3Dモデルができる。このモデルを、法規制がクリアできる空間内で位置や高さ、長さなどを調整していく。

 匠や構造部材、設備などの詳細部分も“種”の中に既に組み入れられているので、いちいち入力する必要はない。

建物の“種”には、構造部材や設備、間取り図などがあらかじめ組み込んである(資料:flux.io)

階段や構造部材などの細部までがモデル化されている(資料:flux.io)

 また複数の棟からなる建物は、それぞれの棟の位置をずらしたり、個別に引き延ばしたりすることができる。すると渡り廊下や鉄骨、配管なども自動的に再生され、詳細な3Dモデルが出来上がる。設備なども自動的に追従する仕組みだ。

建物の中心点を動かすと、その棟全体が移動し、他の棟との整合性が自動的に保たれる(資料:flux.io)

 “種”からできたスタンダードの建物をもとに、敷地の大きさや高さ規制などの条件に応じて建物を縦横高さ方向に変形させることもできる。

 そして、画面の左右には、現在の床面積や1平方フィートあたりの建設費、初期建設費、駐車場の必要台数などのデータがリアルタイムで表示され、設計要件を満たしているかをいつでも確認できる。

スタンダードな建物(資料:flux.io)

低層化した建物(資料:flux.io)

大きな敷地向けに拡張した建物(資料:flux.io)

 建物の3Dデータが生成される様子は、まるで植物の種から、樹木が育つようなイメージだ。成長段階に応じて幹や小枝など(構造部材)は整合がとれた形に自動調整され、内部には細い葉脈(配管設備)が漏れなく配置される。

 樹木がオレンジ、リンゴ、ナシ、クリなどのそれぞれの種から生まれるように、建築物も集合住宅、オフィスビル、ホテル、学校などの“種”ができるというわけだ。