工事現場で施工管理を担当する技術者というと、施工図や技術資料、野帳、デジタルカメラ、黒板など多くのものを持ち歩く姿を想像しがちだ。ところが最近、小型・軽量で様々な機能を持つタブレット端末が施工管理のツールとして普及しつつある。水やほこり、衝撃にも強いアウトドア型の機種が続々と発売され、タブレット端末で施工管理を効率化するノウハウやアプリ(アプリケーション・ソフト)を紹介した指南書も出版された。


 設計工事現場での施工管理では、分厚い図面集や資料、野帳などの紙ベースでの業務がこれまで主流だった。そのため、重い書類などを持ち歩く労力がいるほか、情報を得るためには時々現場事務所に戻る必要があった。

 また、現場の作業が終わった後も、夜遅くまで事務所で図面などに記入した情報を報告書にするためパソコンで入力したり、デジカメで撮影した工事写真を整理したりという作業が待っている。

 こうした非効率を解消し、施工管理業務の生産性を大幅に改善するための“新兵器”として期待されているのが、タブレット端末だ。

iPad3000台、技術職全員に配布した大林組

 これまでの施工管理業務の不便をなくし、業務の効率化を図るため、大林組はICT(情報通信技術)を使って施工管理者のワークスタイル変革に乗り出した。その切り札がタブレット端末だ。

iPadで施工管理を行う技術者のイメージ(写真:大林組)

 今年8月から、同社は現場で施工管理を行う技術職全員に約3000台ものiPadを配布し始めた。現場内では無線LAN(Wi-Fi)を用い、工事事務所のアクセスポイント経由でネットワークに接続できる。

 タブレット端末には、施工管理に必要な技術標準や施工標準図などの技術資料や安全資料を搭載しているので、重くてかさばる紙の資料を持ち運ぶ必要は少なくなる。

 また、端末に入っていない資料が必要になったときは、iPadの通信機能を使ってクラウド上のサーバーにアクセスし、必要な図面などを確認・参照できるので、いちいち現場事務所まで戻る必要はない。

 配筋や設備、仕上げなどの検査も、現場検査支援システムを利用することにより、現場で図面に書き込んだ記録をその場で電子データ化として保存できるので、現場での作業終了後に事務所に戻ってパソコンで再入力する手間もなくなる。

今回、全現場にiPadを導入することになったのは、社内の生産性向上策の一環としてだ。iPad導入による具体的な数値目標はないものの、iPad導入により確実に業務効率や生産性は上がると同社ではみている。

グラフィカルに作業指示

 作業員に対する指示も「見える化」できるようになる。写真や図面、施工計画書、打ち合わせ記録などをタブレット端末の大きな画面に表示しながら、視覚的に分かりやすく指示できる。

 大林組では今後、このタブレット端末をBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)と連携させることも計画している。部材の詳細な納まりを様々な角度から3次元CGで確認しながら施工を進めたり、BIMで作成した施工シミュレーションのアニメーションを現場で見たりするような、紙ベースの業務では不可能だった使い方もできるだろう。

タブレット端末には施工管理に必要な情報やシステムが豊富に搭載される(資料・写真:大林組)

 手軽に持ち運べる端末だけに、盗難や紛失が心配だが、パスワードによるロックと自動フォーマット、遠隔操作で端末内のデータを消去できる「リモートワイプ」といった対策によりデータを保護できるので、万一、端末を紛失したときもデータ流出も最小限に抑えられる。

 端末には電子証明書とMDM(モバイル・デバイス・マネジメント)を導入し、ネットワークへの接続を登録端末に限定することでセキュリティーを高めている。

 施工管理を担当する技術者は1台のタブレット端末を持つことにより、作業現場にいたまま情報の確認や報告書作成などの業務処理ができるようになるのだ。仕事が楽になり、効率化できるだけでなく、現場で発生したトラブルなどにも迅速に対応できるようになりそうだ。