旧橋を残すか否か、近隣住民の間でも意見が割れた。検討会での議論を踏まえ、維持管理費の負担や落下物などの危険性が最も少ない保存案として、餘部駅側の橋脚3本を残すことで住民も合意した。

 「余部鉄橋の物語を継承する空間整備」などを基本方針に、オリエンタルコンサルタンツが展望施設の設計を担当。上部構造や下部構造の腐食調査を踏まえて、必要な箇所を補修したうえで、レベル2の地震動に耐え得る施設として設計した。

旧橋時代の軌道をそのまま遊歩空間に

JR餘部駅から展望施設に続く長さ60mのアプローチ部。旧橋時代のレールや枕木をそのまま残した。右手が餘部駅のホームだ(写真:生田将人)

 「橋軸直角方向の断面構成は既存形状を継承し、アプローチ部と鉄橋先端部は旧橋時代の軌道を遊歩空間としてそのまま残した。新たな整備は最低限にとどめた」(同社関東支店都市地域創生事業部門都市デザイン部の大波修二副主幹)。

 オープンから約1カ月後に訪ねた現地では、餘部駅に電車が到着するたびに大勢のツアー客が降車。お目当てはもちろん、遊歩空間の先にある展望施設だ。余部湾を一望する眺めに歓声を上げていた。

 保存対象となった鋼製橋脚の足元では、「空の駅」の一部を構成する公園施設の整備が今も進行中。「空の駅」の維持管理で、県と地元の香美町はそれぞれの役割分担を取り決め、塗装の塗り替えなどのメンテナンスは県が、日常的な清掃などは町が担う。両者が一体となって、旧橋とその時代の記憶を残すこの施設を地域活性化に生かす考えだ。

展望施設部分は幅員3mで奥行き68m。海側には眺望を楽しめるベンチを設置。橋面の2カ所にガラス窓があり、下の橋脚をのぞける。展望施設の先端(写真奥)から先に旧軌道が14m続き、フェンス越しに見える(写真:生田将人)
ガラスののぞき窓から橋桁や橋脚が見える。床版は脱色アスファルト舗装で、レールを意匠モチーフにした(写真:生田将人)