「普通の技術者が見過ごすものも見逃さない」、「現地の地形や地質に適した的確な助言をしてくれる」──。応用地質エンジニアリング本部技師長の上野将司氏に対する社外の専門家の評価だ。そんな上野氏の40年以上の経験が詰まった書籍「危ない地形・地質の見極め方」をこのほど日経BP社から発刊した。上野氏は、本書を活用すれば「先輩技術者が一定のレベルに達するのに要した経験年数を短縮できるものと考える」と前書きで述べている。詳しいノウハウは本書に譲り、日経コンストラクション2005年10月28日号の特集「頼られる土木技術者の条件」から上野氏の横顔を紹介する。

うえの・しょうじ
1947年生まれ。69年に北海道大学理学部地質学鉱物学科卒業後、応用地質に入社。大阪、福岡、岡山、高松などで勤務。95 年に技術本部(現・エンジニアリング本部)に配属になり、斜面防災部長、道路部長を経て、2000 年から技師長。専門は斜面防災。博士(工学)、技術士(建設・応用理学部門)、上級マップリーダー。主な著書に「危ない地形・地質の見極め方」(日経BP社)、「切土のり面の設計・施工のポイント」(理工図書)、「斜面地質学」(共著、日本応用地質学会)、「空の旅の自然学」(共著、古今書院)、「生態学的な斜面・のり面工法」(共著、山海堂)など
(写真:上野 将司)

 応用地質技術本部技師長の上野将司氏は、北海道の豊浜トンネルの岩盤崩落事故など、大規模な災害の対策工事の立案などで重要な役割を果たしてきた。地質に関する知識の豊富さもさることながら、優れた現地調査の技術は社外からも高く評価されている。

 「上野さんが急斜面を踏査して描いたルートマップと、私がレーザー測量して描いた図面とがほぼ一致していた。災害の原因を推定しながら、急斜面を歩測して正確に調査できる人は非常に少ない」。こう証言するのは、被災地を上野氏と一緒に何度か調査したことがある太田ジオリサーチの太田英将社長だ。

 上野氏の1歩の歩幅は75cm。だから20歩なら、15mの距離だと“歩測”できる。現地では、方位磁石(クリノメーター)で方向を確認しながら、常に歩数を数えて歩く。急な斜面だと歩測の精度は落ちやすいので、腕時計に内蔵した高度計を活用して精度を高める。

 「最近は精度の高い地形図が入手できる。しかし、樹木が密生した斜面などは、いまでも歩測が重要だ」と上野氏は話す。

 地表面で観察できるあらゆる情報をルートマップに盛り込む。ひび割れの状況、湧水の量、落石が木に接触した痕跡といった細かな地形に関する情報だ。

大学卒業直後に上野氏が現地調査して描いたルートマップ。縮尺は2000分の1で描いてある(資料:上野 将司)