大林組の辻野慶恵氏(左)と永田礼子氏(写真:澤田 聖司)

 「大林組は現場をやりたい人材を求めていると聞き、就職先に選んだ」。社会人5年目を迎えた大林組の永田礼子氏は、入社の動機をこのように話す。新人研修を終えてすぐに現場へ配属され、現在は首都高速道路中央環状品川線大井地区トンネル工事でPC(プレストレスト・コンクリート)橋の施工管理を担当している。

 2009年4月に入社し、永田氏と同じ作業所でシールドトンネル工事を受け持つ辻野慶恵氏も「構造物が目の前でできていくのを見たかったし、自分も造った一人だと胸を張りたい。現場以外の職場は考えられなかった」と目を輝かす。

 以前から、女性の活用が進んでいると定評のあった大林組。しかし、2000年以降は、採用ゼロか1人程度の年が続いた。同社理事で土木本部本部長室の井上幸二部長は「結婚で退職する人が多く、歓迎気分がなくなった。専任職の採用を打ち切ってからは、ますます女性を採りにくくなった」と打ち明ける。

 採用方針が変わったのは09年ごろからだ。10年には6人の女性土木技術者が入社し、11年の採用でも6人に内々定を出している。いずれも総合職としての採用だ。

 同社が女性技術者の採用を増やしているのにはいくつか理由がある。一つは、入社希望の女子学生が増えていること。もう一つは、育児のための時短勤務制度など、女性が働き続けやすい環境が整ってきたこと。さらに、採用方針が能力最優先に変わりつつあることも大きい。「採用の視点から、性別と国籍を完全に外した。会社のために役立つ優秀な技術者を確保しようとすれば、女性を排除する理由がない」(井上部長)。

 先駆者たちの実績も女性への評価向上に貢献している。同社はこれまで合計60人ほどの女性技術者を採用。半数は退社したが、残った半数は着実に成果を出している。既に各工種のリーダーである工事長が4人、課長職が3人誕生した。

 永田氏と辻野氏も、「現場で与えられる仕事は男性社員と全く同じ。ここまでやらせてもらえるのかと驚いたほどだ。私たちが今あるのは、40代の先輩たちが道を切り開いてくれたおかげ」と口をそろえる。