新国立競技場の建設に向けた手続きが進むなか、計画に対する批判が収まらない。建築家の槇文彦氏はこのほど、「ポストオリンピックの新国立競技場についての提言」と題する自らの対案をまとめ、日経アーキテクチュアに寄稿した。新国立競技場について、観客席上部だけに屋根を設ける「無蓋化」を提案。「国際子供スポーツセンター(仮称)」を併設するコンセプトを披露した。

槇文彦氏が提言で示したコンセプトイメージ図。競技場に室内子供スポーツ施設を併設する提案だ(資料:槇総合計画事務所)

 提言では、日本スポーツ振興センター(JSC)が5月に公表した新国立競技場の基本設計案について、「様々な疑問点がコスト、維持費、性能について浮かび上がってくる」と指摘。天然芝育成や可動式屋根など具体的な疑問点を列挙している。そのうえで、無蓋化すれば、「計画は柔軟性を増し、建設費、維持管理費も一挙に削減し得る」、「スポーツ関係者の信頼が増大する」と主張。五輪後を見据え、子供のためのスポーツ施設を併せ持つアイデアを提案した。「無蓋化によって節約し得た膨大な建設費のごく一部のコストによって施設は実現し得る」とも言及している。

 槇氏は日経アーキテクチュアに対し、「有蓋で12日間の音楽中心のイベントと、無蓋で365日大人も子供も楽しめる環境のどちらを貴方は選びますかという単純な比較によって、建築の善悪を超えた国民的世論に訴えていきたい」とメールでコメントを寄せた。

 槇氏は、JSCが進める新国立競技場の計画について「巨大すぎる」といち早く疑問を提起。基本設計案の発表後の6月、日経アーキテクチュアのインタビューに応じ、「有蓋施設が諸悪の根源」、「世紀の愚挙」と鋭く批判。「我々は、現計画はおかしいと言い続けていく。あまりにも問題が多すぎるからだ」と述べていた。

 インタビューでは、一部の反対派が主張する現国立競技場の改修案について、「私は保存という情念に問題を託すよりもまず、現在案を徹底的に批判する立場を取っている。もちろん保存改修案には不賛成ではないが、現国立競技場が解体されたら、これまでの真剣な議論が水の泡になってしまう」、「私は更地になってからでも、いろいろな考え方があるのではないかということを強調したい」と語っていた。

槇文彦氏。新国立競技場の基本設計案公表後の6月、日経アーキテクチュアの取材に応じた(写真:山田 愼二)

 以下に、槇氏の許可を得て、提言を全文掲載する。