再建を果たした装飾芸術の都

 バルト3国の真ん中に位置するラトビアの首都・リガ(Riga)は、タリンからバルト海沿岸を約300km南に下ったところにある。歴史的に中欧と東欧間の貿易における結節点であったことから、13世紀にはタリンと同様にハンザ同盟にも加入し、多文化都市として成長してきた。

リガ旧市街(写真:菅昌 徹治)

 この歴史を物語る建物が、市庁舎と並んで建つブラックヘッド会館(House of the Blackheads)である。元々の会館は、リガの様々な組織の会合や祝宴の場として14世紀に建設され、19世紀までの間に装飾が加えられるなどにより、街の顔としての役割を果たしてきた。第2次世界大戦の際に破壊されて瓦礫(がれき)の山となってしまったものの、ソ連からの独立後に再建のための調査が始められ、1999年には元の姿が蘇ったのである。

ブラックヘッド会館(写真:菅昌 徹治)

 また、リガ市街は、アールヌーヴォー建築の多さでも知られている。中心部の約40%に当たる800もの建物がアールヌーヴォー様式であり、様々な色合いの奇抜な装飾が施された建築物を街のあちこちで見ることができる。

 アールヌーヴォー建築が流行した19世紀末から20世紀初めの時期のリガは、ヨーロッパ諸国とロシア帝国の交差点として経済的に繁栄しており、サンクトペテルブルクやモスクワ、ヨーロッパの大都市などで学んだ新進気鋭の企業家や技術者が多く集まっていた。こうした状況が、街全体を舞台とした新しい装飾芸術の開花・普及を促したとも考えられている。2009年に市内にオープンしたアールヌーヴォー博物館では、意匠を凝らして装飾されたらせん状の階段や、復元された室内装飾なども見学することができる。

リガ・アールヌーヴォー博物館(写真:菅昌 徹治)

 なお、初期の建物の大部分は戦争などで破壊されたものの、ハンザ同盟時代からの歴史を受け継いでいる旧市街や、アールヌーヴォー建築物群などの保護を図るため、リガ歴史地区も1997年に世界遺産に登録されている。