この記事は、耐震改修を多数手掛ける金井工務店(埼玉県川口市)社長の金井義雄さんが気になった耐震改修時の問題点に、工学院大学教授の河合直人さんが答えるものだ。今回のテーマは、耐力壁が倍率5を超える場合の問題点やその対策だ。日経ホームビルダーの連載「危ない軸組」の2014年4月号に掲載した内容を紹介する。

 下に示した事例は、金井さんが書類による耐震診断を建て主から頼まれた3階建て木造住宅だ。新耐震基準で設計していたので、耐震診断の評点は1.0を上回っていた。

●構造計算に算入していた外周部の耐力壁A  ●実際の外周部の耐力壁B
金井さんが書類による耐震診断を頼まれた3階建て木造住宅の2階部分の耐力壁を示したもの。室内の耐力壁は省略した (資料:金井工務店の資料を基に日経ホームビルダーが作成)

 金井さんが注目したのは、ほとんどの外壁下地に倍率3を取得している国土交通大臣認定の面材耐力壁を使用しているのに、構造計算には一部しか算入せず、倍率4のたすき掛け筋かいなどで必要な壁量を充足させていたことだ。

 図Aは構造計算に算入していた外周部の耐力壁、図Bは実際の外周部の耐力壁だ。Bは構造計算に算入していなかったものを含んでいる。Aでは倍率4のたすき掛け筋かいだけの部分が、Bで見ると外側に倍率3の面材耐力壁を重ねているので、倍率の合計が7になる。

 「この事例のように筋かいと面材耐力壁を併用している住宅はよく見かける。面材耐力壁を下地材に使って構造計算には算入しなかったのは、少しでも耐震性能に余裕を持たせたいと思ったからかもしれないが、効果は得られるのだろうか」と金井さんは疑問を投げ掛ける。