用途によって残響時間を変えられるホール

 多目的ホール「よみうり大手町ホール」はステージがビルの4階に位置し、ステージ前から階段状に5階まで座席が並ぶ劇場型。ホール専用のエレベーターがあり、地下鉄大手町駅のC3出口と直結している。座席数は501。バックヤードには楽屋5室、同時通訳室3室、速記室1室を備える。約350m2の小ホールとは5階のホワイエを挟んで向かい合っており、イベントによって2つのホールを連携して使うこともできる。

 よみうり大手町ホールの特徴は、音を拡散させる半円状の部材を約10m重ねた壁。舞台の音を多方面に反射するとともに、間に開けた穴にも音を回り込ませ、時間差を設けて響かせるという。講演などに用いる場合は、壁とこの部材の間に吸音カーテンを下ろして残響時間を短くすることも可能だ。

よみうり大手町ホール。2014年3月に開館する。開館を記念して読売日本交響楽団や宮内庁式部職楽部が公演する予定(写真:赤坂 麻実)

ホールの壁。半円状の構造体と壁の間に吸音カーテンを下ろせる。カーテンのない状態では残響時間が1.5秒と長く、楽器の演奏などに向く。カーテンを下ろすと1.0秒になる。壁の表面の細かな溝は、特に高音域を効果的に拡散させるという(写真:赤坂 麻実)

 ビルのエントランスは、3層吹き抜けで高さ約20m。内装のテーマは、新聞の編集から発想して「編む」とした。新聞紙の材料となる木を編むように配置したデザインを天井などに取り入れた。壁面は、ガラスを内側からLED照明で照らす「光壁」とした。時間によって照明の色を変えられる。エントランス奥には横山大観が読売新聞の依頼で1939年に描いた「霊峰富士」を飾る。

エントランス。木を使ったデザインが特徴(写真:赤坂 麻実)

エントランスの「光壁」。4種類の和紙調フィルムを使っている。横長のデジタルサイネージにはニュースなどを流す(写真:赤坂 麻実)

横山大観の「霊峰富士」。縦2.5m×横4.5m。読売新聞から日本テレビに貸し出されていたが、新社屋の完成を期に読売新聞ビルに帰ってきた(写真:赤坂 麻実)

 9階の編集局は中央部に朝刊や夕刊の紙面について検討する「立ち会い」用のテーブルを設置。テーブルの上は11階まで吹き抜けとし、意思疎通がしやすいようにした。オフィス部分の照明はすべてLED照明とし、人感センサーを使って不要時はオフにすることで消費電力を抑える。窓ガラスは2重にするとともに日光の遮蔽率を高めた。自然換気口で外気を取り入れて空調負荷を減らす工夫もしている。

9階の編集フロア。オフィスは無柱。天井高さは3mで、200mm程度の2重床とした。トップライトからは低層部屋上(高さ67m)に設けた屋上庭園が望める(写真:赤坂 麻実)

大震災が起きても新聞発行が続けられるよう、9~11階は特に耐震性を高めたという。ほかのフロアに比べて窓が少なく、面積が広い壁を全面、粘性体制振壁とした。粘性体制振壁はほかのフロアではエレベーター側にのみ採用するなどしている(写真:赤坂 麻実)

読売新聞ビルの概要

  • 名称:読売新聞東京本社ビル(愛称:読売新聞ビル)
  • 所在地:東京都千代田区大手町1-7-1
  • 用途:事務所、店舗、多目的ホール、駐車場など
  • 階数:地下3階、地上33階、塔屋2階
  • 高さ:200m
  • 敷地面積:6142m2
  • 建築面積:3612m2
  • 延べ面積:8万9650m2
  • 駐車場:200台
  • 着工:2011年8月1日
  • 竣工:2013年11月28日
  • 開業:2014年1月6日(予定)
  • 建築主:読売新聞東京本社
  • 設計・監理:日建設計
  • 施工:清水建設