2013年10月、伊勢神宮は第62回の「式年遷宮」を迎える。ケンプラッツでは遷宮にあわせて『承 井上雄彦 pepita2』を企画。自然や歴史、先人から承ったことを伝え継ぐための書籍+DVDを9月30日に発刊した。

書籍には、第61回の式年遷宮で総棟梁を務めた宮間熊男氏と漫画家の井上雄彦氏、建築家の藤森照信氏の鼎談を掲載した。宮間氏は、20年に一度の遷宮の造営を、20代、40代、60代と3回経験した宮大工だ。式年遷宮を目前に控えた今日から3日連続で、書籍に収録し切れなかった内容も含めて、専門家であるケンプラッツの読者の方々に鼎談の全容をお届けする。

「神様のお住まい」をつくりつづけた巨匠に聞く

井上 20年に一度の式年遷宮を3回体験されたというのは、大変なことですね。

宮間 そうですね。ちょうどうまく自分が20歳そこそこで参加できたっちゅうことが、3回奉仕する結果になりました。

藤森 最初は、内宮、外宮、どちらを?

宮間 内宮さんをやって、二度目が外宮。三度目が内宮です。

藤森 外部にいると、とにかくヒノキのいいのが減ってしまって、木が足りなくて大変だと聞きます。戦後の3回のうち、常に木が足りないという問題があったのですか?

62回目の式年遷宮を迎える伊勢神宮の内宮。10月2日の夜に“遷御の儀”が執り行われる。天照大神を祀る内宮の御正殿は、最奥の聖域である内院にある。板垣、外玉垣、内玉垣、蕃垣、瑞垣という五重の垣に守られている。一般の参拝は、二つ目の門の外玉垣南御門の前までで、中には入ることはできない。式年遷宮では、20年に一度、御社殿の横の敷地に新宮を建てて、大御神にお遷りいただく。持統天皇の代に始まって以来、約1300年続いている。御社殿だけでなく、御装束、御神宝、714種1576点を新調するため、8年前から準備が始まる(写真:鈴木愛子)

宮間 ええ。私が経験したうちでは、59回(昭和28年)のときの遷宮が、木は一番よかったですね。きれいな一等材ばかりだった。59回の遷宮は、戦前に、神宮が国の管轄だったときに先に材料は木曾の山で伐ってきたからいい木が伐れたわけですね。それから昭和20年の敗戦以降、神社は宗教法人になって国から離れましたもんで、木は林野庁から買うわけですから、少しは材料が落ちたやつでも無理して使わないかん、いうふうになりました。仕事をやってるからそれが分かったんですけれどね。

藤森 どんな感じで分かります? 

宮間 節の多い少ないは、木だからみなありますけれど、「アテ」の木が混じってね。

藤森 曲がりが強いような?

宮間 まともに板にとれないことがありました。板なんかに挽くと反り返ってくるような。今回の遷宮は3割ぐらい、神宮の山の木を使うようになったと思います。

藤森 3割ですか。

宮間 7割ぐらいはまだ、木曾、長野県とか岐阜県から出てます。

藤森 基本的には、木曾からとるんですか。

宮間 木曾の木は一番。ヒノキでも色が、肌が白いし、一番いいといわれてますね。

井上 ヒノキの優れているところというのは、見た目なんですか?

藤森 どうですか? ヒノキとほかの木を使ってみられて。

宮間 ヒノキは工作にもしよいしきれいやし、ヒノキを使っていると、ほかのスギとかは使えませんね。

藤森 そうですか(笑)。

宮間 私なりに考えるに、徳川時代にあれだけ木曾の山を植林してちゃんとしてくれてあったから、今、御用材をこうやって使わせてもらえるんだと思いますな。

藤森 今、一番年輪の大きいのは、どれぐらいのを使っていますか?

宮間 300年から、一番よう年輪がこんでいるのは400年近くまで。

藤森 それこそ江戸の初期に植えたんですね。

宮間 木一本盗んだら首が飛ぶ、ちゅうような条例が出ました。そんな時代の木だから、目もこんでいて、あっちもこっちもやたらに生えてないらしいですね。よほど棟持柱なんかを伐り出してくるのには、いろいろな山を探してもらわないと。